第3話
転校生の彼女は西野七瀬と名乗った。
蓮が言っていた通り、七瀬は可愛かった。白石や飛鳥とはまた少し違った系統ではあるが、間違いなく男子にモテる。そんな気がした。
設楽「そうだなー、あ、橘、お前横空いてるよな?西野、橘の横座ってくれるか?」
七瀬「はい、わかりました。」
そう言うと七瀬は失礼しますと頭を下げながら蒼の隣の席に座った。
目が合うと、恥ずかしそうに「よろしくね。」と口パクで言って来たので、蒼もよろしくと返す。
蓮がテンション上がるのもわかる気がすると思っていたとき、背中に痛みがはしる。
蒼「いって!!」
設楽「どうした橘?」
蒼「・・・いえ、何でもないです。」
設楽「はい、じゃあとりあえずこの後の予定言うぞー。まず・・・」
設楽先生が気にせず話を始めたので、そっと後ろを振り返る。
蒼「なんだよ。」
飛鳥「別に。ニヤニヤしてたからムカついただけ。」
蒼「してないって。てかしてたとしても飛鳥が怒ることじゃないだろ。」
飛鳥「・・・そうだね。」
設楽「おいそこ、何話してる〜?ちゃんと話し聞け〜。」
蒼「すみません。」
蒼は前に向き直り、話を聞く。
設楽「よし、じゃあとりあえず朝のHRはこれで終わり。じゃあ、この後始業式だから体育館行って〜。橘、戸締りよろしく。」
蒼「え、俺ですか?」
設楽「途中話聞いてなかったからな。放課後掃除よりマシだろ?」
蒼「・・・わかりました。」
設楽先生にこう言われては仕方がない。みんなが出るのを待って戸締りをする。が、七瀬はキョロキョロするばかりでいつまで経っても出ていこうとしない。
蒼「あのー、西野さん、体育館向かっていいよ?」
七瀬「橘くん・・・やっけ?もしよかったら、ななと一緒に体育館行ってくれん?」
蒼「あーそっか、来たばっかで分かんないもんな。いいよ、行こっか。」
七瀬「ありがとう。あ、せや、西野七瀬です。よろしく。」
蒼「橘蒼です。よろしく。」
七瀬「蒼くん・・・いい名前。」
蒼「西野さんもね。てか、関西弁なんだね。」
七瀬「うん、なな大阪から来てん。もう東京来て1週間経つねんけど、全然抜けへん。」
蒼「無理に抜かなくてもいいんじゃない?それに、方言とか訛りって育ってきた土地特有のものじゃん?だから、俺は好きだけどな、そういうの。」
七瀬「・・・そっか。じゃあなな関西弁で話す!」
蒼「ん、西野さんはそっちの方がいいよ。」
七瀬「ありがとう。あと、名前で呼んでほしい。ななも蒼くんって呼ぶから。」
蒼「わかった、七瀬さん。」
七瀬「ふふっ、ありがとう。」
その後も2人は体育館に着くまでたわいもない話をした。
その一方で、十数メートル先で2人の様子を気にする飛鳥の姿があったことをまだ蒼は知らない。