日常
第27話
部室棟と思われる建物の前まで来た。
私立の高校というだけあってなかなか立派な建物だ。話でしか聞いてはいないがシャワー室等も完備しているらしい。
だが、もうとっくに完全下校の時間は過ぎているのでどの部活の部室も電気はついていない。
そう思ったが、1番奥の部室だけ電気がついていた。

『あそこに白石いるんじゃ…』

そう思いとりあえず部室棟に入ろうと思い、建物自体の入り口へ立つと注意書きと思われるものが書かれていた。


“男子禁制、男子生徒の立ち入りを発見した場合停学および退学処分に処す”

そう書かれていた。
智大と一緒にいるからあまり周りには知られていないが実は僕はとても臆病だ。

足がすくむ。

だが、もうとっくに部活は終わっている。連絡しても返事がない。…

『もう仕方ないっ!』

そう思い思い切って部室棟のドアを開ける。
鍵は空いていた。やはりまだ誰かがいる。

先程明かりがついていた部室の入り口のところまで行く。

“女子ソフトボール部”

『やっぱり…』

中からは何か物を物色しているような物音がかすかに聞こえてくる。

『白石なのか…?』

これだけじゃ中にいるのが白石なのかわからない。
もし、全く知らない先輩や同級生だとすれば僕はただの変質者だ。

というか、そもそももし白石だったとしても。単に帰る支度に時間がかかっているとしたらそれはそれでいいのだが、その場合僕は変質者になる。

僕の悪いところだ。
ネガテイブな考えが次から次へと頭を埋め尽くす。

その時だった。

「「ない…どうしよう…」」

中から微かにだがか細い声が聞こえた。お化け屋敷の時と似たトーンだったからすぐわかった。間違いなく白石だ。

「し、白石!?大丈夫!?」

僕は迷いなく声をかけた。

「え、だ、だれ!?な、なおき!?」

「うん…。ごめん。やましい気持ちとかそんなんじゃないんだ。様子が変だったし連絡もつかないからなんか心配になって…」

「そうなんだ…」

そういうとそのまま黙り込んで喋らなくなった白石。

「さっき、なんか探してたみたいだけど…どうしたの…?」

「え、あ、いや、な、なにもないよ…だ、大丈夫…!」

その声は明らかに震えていた。普通じゃない。そう思った。

「白石絶対何か変だよ!僕でよければ探すの手伝うよ!なんでも言ってよ!」

少し声のトーンが上がる僕。

「だ、大丈夫だって!私のことは心配しなくていいから先に帰ってて?」

白石もそれに応じて声のトーンが上がる。その興奮している声の中に、涙ぐんだ声が聞こえた気がした。

「大丈夫じゃない!!」

思わず怒鳴ってしまった。このような経験は初めてだ。
扉越しの白石は完全に黙ってしまった。



「ぅぅ、ぐすっぐすっ、ぅぅぅぅ。」

少しの沈黙の後、白石が小さな声で鳴き始めてしまった。途端にどうしたらいいかわからなくなり頭が真っ白になる。

「ご、ごめんっ!口調強すぎたよね…でも、僕は本当に白石が心配で…部活の時もなんだか様子がおかしかったし。帰りすれ違ったソフトボール部の上級生の人たちが喋ってた内容が聞こえちゃって。どうしても心配で…」

「ううん…な、おきは、ぐすっわ、悪くないの…」

「ううん。怒鳴ったのは僕が悪かったよ。本当にごめん。僕でよかったらなにがあったか教えてくれない…?」

しばらく沈黙の中に白石の鼻をすする音が鳴り響き続けた。

そして、しばらくの沈黙の後白石が重い口を開いた。



■筆者メッセージ
こんばんは!
本日三本目ですっ!
僕自身としては初の1日3投稿になりますね!
話を書くのが楽しくてこのくだりを一通り書き終えることができ、少々ストックができてので出したいと思います!
どんどん急接近する2人!ここからもお楽しみに!
ちぇくの ( 2018/11/27(火) 01:30 )