第2話
「あの。」 「あの。」
校門で先生にクラスを聞いて教室へと向かう道中、あまりの無言の気まずさに耐えきれず話しかけたのだが、運の悪いことに向こうも同じことを考えていたようだ。同時に話しかけてしまった。
さらに気まずい雰囲気がその場に流れる。
「あ、先にどうぞ。」
これ以上沈黙が続くのはまずいと思い僕からこの沈黙を打開した。
「あ、いえ。そちらからどうぞ。」
「えっと、あの。橋本さん…?でしたっけ?」
「そうです。橋本奈々未といいます。
内田直樹さん…ですよね?」
「あ、そうです。内田直樹といいます。」
何故だろう。
彼女から漂う大人で落ち着いた雰囲気のせいか、同い年だとわかっているのについ敬語で話してしまった。
「あの、今日はなんで遅刻されたんですか?」
彼女から新しい話題を切り出してきた。
「僕、ものすごい方向音痴で駅から学校までの道で迷っちゃって…」
「え、駅からここまでほとんど一直線ですよね?
「はい…本当に方向音痴で…」
どうして何も言わないのだろうと思い横を見ると手を口に当てて笑いをこらえていた。
「え、そんなに面白かった?」
「ハハハハハ!新学期早々、道に迷って、遅刻するって!はははっ!しかも、ここまで、ほとんど、ヒクッ、一直線、ヒクッ、なのに!」
何が彼女のツボにはまったのかわからないが、どうやら相当面白かったらしい。しゃっくりまで起こしてしまっている。
「え、そんなに面白かった?」
「うん。ヒクッ、めちゃくちゃ面白い!ヒクッ」
そうこうしているうちに教室の近くまでやってきた。
いつのまにか敬語は無くなっていて、新学期早々、ぼっちは避けられそうだ。
それにしてもまだ彼女、しゃっくりしているが大丈夫だろうか…