第17話
長いようで短かった待ち時間が終え僕と白石は廃病院への中へ入った。
入ると最初に小さな部屋の中へ入らされ動画を見させられた。
まぁ白石は耳に指を入れ目をつぶっていたため全く聞いていなかったが。
どうやらこのお化け屋敷はとても大きく、スムーズにゴールしても20分はかかるみたいである。
動画を身終えると入っていた方とは別の方の扉が開いた。どうやらここからお化け屋敷を進んでいくようだ。
「白石いくよー」
声をかけたが返事がない。
白石の方を見てみると目をつぶり耳に蓋をしているため動画が終わったことに気がついていない。
怯えて体を丸めて縮こまっている様子はまるで子猫のようだ。
そんな子猫に少しいじわるをしたい。そんな衝動が僕を動かした。
「わーっ!!!」
突然大きな声を出して白石の肩を両手で揺さぶる。
「きゃっ!!!!」
とても驚き壁の方へ光の速さで飛んで行った。
「うそでしょ!さいてー!」
涙目の白石がこちらを見て言った。
「ごめんごめん。まさかそんな驚くと思わなかった。」
想像以上の白石の反応に申し訳なくなった。
想定外の上目遣いにドキッとしたのはなんとか隠せたようだ。
「もういいよ。。行こう…」
『少しやりすぎたな。』
そう思いながら白石の前に立ちお化け屋敷を進み始めた。
「はぁぁぁ、むりぃ!やっぱ無理ぃ!」
「いや、まだ扉出てから2、3歩しか歩いてないよ?」
「むりだよぉぉ。」
怯えに怯える白石のスピードに合わせて歩く。
扉を出てから5分ほど経った。
が、おそらく20mも進んでいないのではないだろうか、赤ちゃんのハイハイよりも遅いスピードで進む僕たち。
途中スピードをあげようと何度か試みたが少しでも速度を上げた途端なかなかの力で白石に服の裾を引っ張られる。
少し、ドキドキする。
今まで感じたことのない感情が襲ってくるのだ。
だが、このままのスピードで進んでるいるとおそらくだが日が暮れる。
そう思った僕は顔面蒼白の白石に声をかける。
「あ、あのさ。白石さ、多分このままだと日が暮れちゃうと思うんだよね?もう少しスピードあげれないかな?」
今になって気づいたが、僕の服の裾を掴む白石の手が小刻みに震えている。
「む、むりだよね…」
どうしようか。リタイアも少し頭をよぎったところに白石が小さな声でつぶやいた。
「手、握って。」
「え?」
「私の手、握ってて…」
「え、あ、う、うん。」
女性経験がない僕だからもちろん異性の手を握ったことなんてない。
白石の手の近くまで自分の手を持っていったはいいもののどう手を握ればいいのかわからず戸惑っていると白石の方から手を握ってくれた。
これはおそらく恋人繋ぎというやつだ。
『すごい柔らかい…女の子の手ってこんな柔らかいんだ…』
はじめての経験に感動した。
そしてそれと同時に先ほどと同じ感情。いや、それ以上の感情が僕を襲う。
心拍数が上がるのが自分でもわかる。恐怖から来るものではない。なんなんだこの感じは…
「直樹…いこ?」
手を繋いだことで頭がいっぱいになり完全に立ち止まってしまっていた。
「あっ、ごめん!じゃあ行こうか。」
そういってようやく普通のスピードで歩き始める2人だった。