言えなかった言葉
04
 食堂はすでに、多くの学生で溢れていた。君はいつものグループで窓際のいつもの場所に座っているのが見えた。

「何?」
「任す」
「場所」
「あいよ」

 友人と交わした長年連れ添った熟年夫婦の様な短い言葉。出会って半年なのにあれだけで意思の疎通が出来るようになっている。同じ半年なのに君とは大違いだ。

 僕は君が見える位置に鞄を置き、ぼんやりと君を眺めた。秋の光を浴びてキラキラと輝いて見える。やっぱり君が好きだ。その切れ長の大きな目も、薄いルージュの唇も、箸を持つしなやかな指も、君を作る総てが。

 ほどなくして、友人が親子丼とカレーうどんの乗った盆を手に戻って来た。食堂ではいつもカレーうどんを食べている。友人曰くメインとメインが同時に味わえる人類有史以来の至高の料理らしい。

 そんな中身の無い会話をしていると、食事を終えた君のグループがテーブルから立ち上がるのが見えた。すらっとした長身とあどけなさが残る顔立ちのアンバランスさに僕の表情筋も自然と緩んでしまう。

「あれ?いたんだ?」

 君が僕の対面に座る友人に声を掛け、こちらにやって来た。またドクンと心臓が跳ね上がった。緊張や嬉しさからとかではなく、驚きと動揺から。


■筆者メッセージ
最近と言うか年末からこっちH.I.S.のCMをよく見るけど…やっぱり可愛いなと改めて思う


昔はロケやってるのよく見たのに今は完全に手の届かない存在としみじみ思うよね
絹革音扇 ( 2014/01/11(土) 14:43 )