言えなかった言葉
03
 ただただ長ったらしい講義もあと5分で終わる。黙って聞いているだけで終わると評される教授の講義は気が滅入るほどにつまらない。隣では友人が天に大口を向けて小さくいびきをかいているし、周りの人たちも居眠りをしているか内職に勤しんでいるのがほとんどだ。

 だけど、僕は起きている。
だって、君も起きているから。君はつまらない講義を聞き真剣な眼差しで番書をしている。僕はそんな君の横顔に吸い込まれてしまい、眠ることが出来ないし、君が頑張っているから僕だって90分×2コマの苦行も同じように頑張れる。

 終わりを告げる鐘の音が響き教授がのそのそと講堂から出ていった。僕は筆記具を鞄にしまい友人を起こした。友人の大あくびと共に近くの数名も目を醒ました。

「腹減ったし食堂行くか」

 伸びをする友人の言葉に僕も立ち上がる。ちょうど君もリュックを肩に掛け立ち上がったところだった。そして、急に振り返って僕と目が合い微笑んだ。
…ような気がした。実際には、背負ったリュックに目をやっただけだ。そりゃそうだ、君にとって僕なんて名も無き路傍の石に過ぎない。

 そんな下らない妄想すらしてしまう自分がたまらなく情けなく思え、友人の肩を叩き食堂へと歩みを進めた。




絹革音扇 ( 2014/01/11(土) 00:43 )