大人の階段 〜十七の夜〜
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時刻は10:40

 まだ約束の時間には早すぎるとも言えるかも知れない時間だったが家でじっとしてることも出来ずにやって来てしまった。

(ま、遅刻するよりかはマシやしな)

 そう自分に言い分けをする事で大義名分を造り上げていた。

時刻は11:05

 約束の時間になりオレの緊張もピークに達していた。

「うぉ!」

「だーれだっ!」

 突如、冷たい手に視界が塞がれ、いつも聞いている声がした。

「え〜?誰やろ?」

「うそぉ!わからへんの?」

「冗談やって、朱里」

 笑って振り返ればそこには天使が……いやいや、最愛の彼女が微笑んでいた。

「ごめんな、待った?」

「いや、オレもさっき来たとこやよ」

 実際かなり待ったがそんなことはおくびにも出さない。オレが勝手に来ただけだし、言ってしまえば男が廃る。

「そうなんや。あ、なぁ今日の恰好サンタみたいちゃう?」

 目の前の天使と見紛うほどに美しい朱里がくるりとその場でターンした。

「ホンマやな」

 その行動もさることながら、赤いコートの裾が翻り見えた生足がやけに美しかった。

「朱里がサンタならオレはトナカイか?」

 ブラウンのレザージャケットを身に纏ったオレはさしずめサンタの相方トナカイと言えた。

「それじゃ、トナカイさんはどこに連れてってくれるん?」

 朱里がオレの手を取り微笑んだ。身長差から少し見上げる形で…

(ヤバ、むっちゃ可愛い)

「そやな…、買いたいもんあるならHEPにでも行こか」

 心の動揺を悟られぬ様に事も無げに提案をする。

「うん!」

 目をキラキラ輝かせ頷き、歩き出す朱里の指に自分の指を絡ませてオレも足を進めた。



 それからHEPだけでなくLUCUA、さらには阿倍野のQ's MALLやハルカスにまで足を延ばした。


 やがて日も暮れだし、きらびやかに輝くイルミネーションを2人で眺める。

「どう?いいもん買えた?」

 イルミネーションを見上げながら彼女に尋ねた。

「うん!でも…」

「ん?」

「ううん、なんもないよ」

「そっか。…あ、ちょっとごめんな電話や」

 一声かけて少し場所を離れ電話に出た。



「朱里!」

 戻ったオレは後ろから彼女に声をかけた。

「うん?」

「はい!」

 振り向いた彼女にラッピングされた袋を渡した。

「開けてみ」

「これ… ええの!」

 不思議そうな顔で袋を開け、中を確認し驚きの声を出した。

「迷ってたやろ?オレからのプレゼント」

 彼女に渡したのは彼女が買おうか迷って、結局諦めたバッグだった。

「嬉しい!ホンマに嬉しいわ!ありがとう」

「喜んでくれて何よりやわ」

「……寒なって来たし、そろそろ帰ろか」




 乗り込んだ電車は彼女の最寄り駅に到着した。

「今日はありがとう」

 彼女が降りようとしたがオレは握った手を離さない。

「え?あれ?」

 戸惑う彼女をよそに扉が閉まり再び電車が走り出す。



「なぁ朱里」

 電車が家の最寄り駅に到着しオレは口を開いた。

「今日さ…」

「家に来やんか?」

 疑問系でありつつ疑問系ではない言葉。

「……うん」

 沈黙の後に彼女は小さく頷いた。






■筆者メッセージ
ホントに最近は大阪にも色々と増えましたね

昔はHEPばっかり行ってたのに……羨ましいな


絹革音扇 ( 2013/12/24(火) 16:37 )