星に願いを
01 序
 PCのディスプレイから放たれる明かりだけが薄暗いホテルの一室を照らす。

「……」

 私は食い入る様に自分の評判を目で追った。もっとも、ネットでの評判に左右されたくはないが気になる物は気になる。

「はぁ……」

 小さくため息をつき、PCをシャットダウンする。目につくのは悪評と辛辣な言葉。もちろん、応援の声もあるがそんなものは4割程度に過ぎない。

「神推し……ね」

 ベッドに寝転がりさっき見た言葉を口にした。

「神なんていないっての」

 悪態をつき窓の外へと目をやった。よく晴れた夜空に星が燦然と耀いている。

「神なんて…」

 何かを否定する様に呟き私は眠りに就いた。







Pippppp…

「はぁ」

 けたたましいアラーム音を止め上体を起こす。今日の天気は快晴。私の鬱蒼とした心情と反比例するかの様な腹立たしいほどに目映いまでの快晴。

「んー」

 伸びを一つした時、視界の片隅に"ナニか"の気配を感じた。

「えっ!」

 自己防衛する様に布団を身体の前に持ち上げ、その"ナニか"を正面から見据えた。

「だ、誰?」

 そこには真っ黒なスーツを身に纏った長身痩躯の男が佇んでいた。

「誰よ、アンタ!どこから入ったの……来ないで」

 私の言葉を無視してそいつは近付いて来た。

『質問が多いな』

『それに、先ずは自分から名乗るべきではないか?』 

「あっ!……私は」

『ま、名乗った所で我輩は答えぬがな』

 危うくそいつに乗せられ名乗るところだったが、続く言葉に自分は名乗らないという意志を読み取った。

「誰なの?」

『……我輩は神だ』

 神…?目の前の男はそう言った?一気に恐怖心が込み上げてきた。

『貴様が我輩を喚んだのでないか?何を恐れる』

「え?」

 そう言って男は姿見へ近付き布を上げた。

「ウソ!」

 鏡には私1人しか映っていなかった。側に立っている男と鏡を交互に見比べても映っていない。

「まさか」

『少しは信じる気になったであろう?』

「幽霊?」

『小娘よ、その耳はただの穴か?ん?』

 私の頭を片手で鷲掴みにした男が顔を近付けた。

『神だと言っているであろう』

 私を小バカにしながら手を離しテーブルに腰かけた。

「わ、私が喚んだってどう言う意味よ!」

 見下された気がして声を荒げ反論した。

『……小娘、たった数時間前の事すら憶えられぬ阿呆だったのか』

「う」

 結果としてバカにされるのは同じだった。
 確かに昨夜、心の中で助けてと願ったかも知れない。

「…わかった、信じるわ」

『やっとか。物わかりの悪い人間だ』

 いちいち癪に障る言い方をする男に苛立ちながら荷物を手にした。

「…………」

『なんだ?』

「シャワー浴びたいんだけど……」

『……で?』

「……覗かないでよ」

『……なぜ我輩がちんけで粗末な貴様の体を見なければならぬ?思い上がるな雌豚が』

「〜〜〜」

 言葉にならない怒りと共にそばにあった枕を思いっきり顔を目掛けて投げつけた。

「…フベッ」

 投げたはず枕が見えない壁に跳ね返る様に私の顔に飛び込んできた。

 男の高笑いを背に私は顔を擦りシャワールームへ向かった。





■筆者メッセージ
さっそく、2作目の短篇を書き上げました

ジャンル的にはファンタジーですかね(笑)
全5話の予定ですのでよろしくお願いします
絹革音扇 ( 2013/12/11(水) 23:15 )