13 13
晴香は重なる様に倒れ込むオレを力強く抱き締めた。母親に抱き締められている様な安心する感覚。すごく幸せだ。
「なぁ・・・」
晴香が言った。顔を見ようと体を離しかけると、それを阻止するかのようにオレをもう一度抱き締めた。
「このままで」
オレはダラリと身を委ねた。
「エージ、あたしを愛せ」
吹き出しそうになった。なんという告白だ。なんとも彼女らしい。
「そのうち死ぬかも知れないけど」
少し小さな声になった晴香を起きあがらせ、向き合うように座らせた。
「そのうち死ぬのは全生物が同じだろう」
晴香の目を見た。涙で潤んでいる。
「そうじゃなくて」
「オレだって明日死ぬかも知れない」
晴香の目から液体が粒状になって落ちた。オレはそれを舌で舐め取る。晴香は俺を見つめ例の嘲笑を見せた。
「じゃ、死ぬまでずっと、あたしを愛せ」
そう言った晴香は世界中の何よりも美しかった。
「愛してやるさ、死ぬまでずっとな」
鼻と鼻がくっつくほどの距離で俺もニヤリと笑った。