都市伝説
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 晴香は重なる様に倒れ込むオレを力強く抱き締めた。母親に抱き締められている様な安心する感覚。すごく幸せだ。

「なぁ・・・」

 晴香が言った。顔を見ようと体を離しかけると、それを阻止するかのようにオレをもう一度抱き締めた。

「このままで」

 オレはダラリと身を委ねた。

「エージ、あたしを愛せ」

 吹き出しそうになった。なんという告白だ。なんとも彼女らしい。

「そのうち死ぬかも知れないけど」

 少し小さな声になった晴香を起きあがらせ、向き合うように座らせた。

「そのうち死ぬのは全生物が同じだろう」

 晴香の目を見た。涙で潤んでいる。

「そうじゃなくて」

「オレだって明日死ぬかも知れない」

 晴香の目から液体が粒状になって落ちた。オレはそれを舌で舐め取る。晴香は俺を見つめ例の嘲笑を見せた。

「じゃ、死ぬまでずっと、あたしを愛せ」

 そう言った晴香は世界中の何よりも美しかった。

「愛してやるさ、死ぬまでずっとな」

 鼻と鼻がくっつくほどの距離で俺もニヤリと笑った。






絹革音扇 ( 2014/07/24(木) 23:43 )