掌編小説集 - 都市伝説
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 一度離し、一瞬だけ目を見つめてからまたすぐに押し付けた。玉藻の唇が微かに開く。オレは容赦なくそこに自分の舌をねじ込ませた。

 玉藻の唾液は甘い。歯の一本一本、頬の内側、舌の裏側、口の中を存分に弄り尽くすと玉藻を優しく寝かせ舌をそのまま首筋に這わせた。

「あ・・・」

 小さく洩れたその声に勃起した。全力で女を抱きたいと思ったのも初めてだ。

 シャツを脱がせ、黒いブラを取ると、胸が露わになった。オレはその頂点に向かい丁寧に丁寧に愛撫した。

 時折洩れる声にもちろん興奮もしたが、何故か胸が締め付けられるような想いもした。


 ショートパンツに手をかけようとした時、玉藻がくるりと回転しオレを下敷きにしてじっと見下ろしてくる。

 あの目ではなく、愛おしそうにオレをその瞳に映してくれた。

(たまらない)

 玉藻が愛しくて愛しくてたまらなかった。

 玉藻はオレのシャツを脱がすと自分の唇をオレの胸に押し当てた。

 ゾクリとした。

 股間がより硬くなる。玉藻の唇はそのまま身体を下へ降りていき、臍をペロリと舐めた。

「うっ・・・」

 行為の最中に声が出たのも初めてだった。玉藻はオレのベルトを器用にスルリと外し、ズボンとパンツを下げた。硬くなったモノに玉藻が舌を這わす。

 耐えられなくなったオレは玉藻のショートパンツを脱がせ、そのまま上に座らせた。

 玉藻の中は暖かかった。下から突き上げる度に、玉藻は声を洩らす。その声を聞くため、また突き上げる。

 玉藻が見せる切なそうな表情がオレをより一層そそらせる。

 玉藻を上に座らせたまま起き上がり、そのまま何度か突き上げ、今度は俺が上になる形で玉藻を寝かせた。

 見つめ合い唇を重ねる。舌と吐息はさっきよりも熱く、唾液はより甘くなっていた。

「ん・・・」

(苦しい。どうしてこんなに・・・涙が出そうなのだろう・・・)

 ふと見ると、ぎゅっと瞑った玉藻の目尻から涙の粒が落ちた。

(ダメだ)

「玉藻・・・オレもう・・・」

「違う・・・」

「え・・・?」

「晴香って・・・呼んで」

 頷いたオレは深く深く晴香を貫いた。これだけセックスに必死になったのも初めてだ。

「あぁ・・・エージ・・・」

 吐息混じりの声で初めてオレの名を呼んだ。背中に食い込む爪を感じながらオレは晴香の中で果てた。




絹革音扇 ( 2014/07/24(木) 23:40 )