04
あの男の訪問までは昨日もらったメンバーからの電話でなんとなく予想はしていた。
しかし、あの男が電話で話していたことは本当なのだろうか?"場所がわかった"と言っていたがその場所とは私が思っている場所なのか?
のらりくらりとしたあの男の心内までは計れない。
男が走り去った後、私はある人物に電話を掛けた。
(なんで出ない…)
無機質な呼び出し音が続くだけで一向に相手の出る気配は感じられない。数コールの後に呼び出し音は音声ガイダンスに切り替わった。
(チッ)
舌打ちと共に立ち上がった私は荷物をまとめて誰にも見つからないよう慎重に出口へと向かった。
撮影スタジオから出ると、あつらえ向きにタクシーがやって来た。
すぐさま捕まえ、運転手に行き先を告げる。
怪訝な顔を一瞬見せたがもう一度言ってやれば、タクシーを走らせだした。
私は車内でリダイヤルをしたがやはり結果は同じ、電話に出ることはなかった。
ちらちらと先ほどから運転手が鏡越しにこちらを見ているのがわかる。
確かに目深に帽子を被りマスクをしている私は怪しく見えるかもしれないが不愉快なものは不愉快。咳払いを一つし急いでもらうよう伝え運転に集中させた。
目的地が近くなり私は車を停めさせた。料金を支払い目的地までは歩いて向かうことにした。
目的地は下町の住宅街にある小さな廃工場。周りに人が居ないことを確認し中へと足を踏み入れた。
「義樹!」
私はいるはずの人物の名を呼んだ。
「なんで来たんだ?」
「そんな事より、ここが警察にバレたみたいよ」
「はぁ!?そんなバカ…
「こんなとこだったとは、盲点だったねー」
義樹の言葉を遮り入り口の方から聞き覚えのある声が聞こえた。
「まさか倉庫じゃなくて工場とはね」
徐々に近付いてくる声。
この声はあの刑事だ。