第三章
06
 南の放った"9時"という言葉に渡辺を除く3名がそれぞれに反応を示す。

「……はい。9時になっても部屋から出て来なかったのでみんなで迎えに行ったんです」

 代表して高橋が答える。

「扉の前で声をかけても出てくる気配もなくて、鍵も掛かってたので心配になってオーナーさんに合鍵を借りて開けたら……」

 高橋の言葉に小嶋と横山も顔を曇らせる。

「そっか」

「その時に鍵取りに行ったのは…… 横山さんね」

 南の言葉に横山が小さく手を挙げた。

「扉前にいたのは2人ってことかな?」

「いえ、私は会場にいるマネージャーさんを呼びに行ってたので……」

 小嶋も当時の状況を語る。

「なるほど…… 高橋さんだけが扉前にいたって訳ね」

「はい……」

「……あの」

 会話に加われなかった渡辺が声を上げた。

「ん?どうしたの?」

「私たち……どうなるのでしょうか?」

 これからどうなるか。その言葉がイベントの事なのか彼女たちの今後を指すのかは南に解らない。

「そうだな……」

「とりあえず、もうちょっとだけ待ってもらえるかな」

 解らなかったが、確実な前者の方を答えた。

「はぁ」

「大丈夫、次の仕事ってあるのかな?それまではゆっくりしてくれていいからさ」

 不安そうな4人に南は笑いかける。たとえそれが彼女たちに届くことのない笑みだとしても。



絹革音扇 ( 2013/12/14(土) 16:42 )