05
階段を昇り2階に着くと、南は何とも言えないどんよりと澱んだ空気を感じ取った。
廊下を進みとある一室の前に立っている警官に一言かけ退いてもらい、ノックをしドアノブに手をかけた。
「入りまーす」
扉を開けけば、廊下以上に重苦しく息が詰まるくらいの空気と感情の読み取る事が出来ない8つの瞳が南を迎え入れた。
(ま、無理もないか……)
自分たちの近しい人間の死を、しかも2日連続で目の当たりにすれば生死に慣れてしまっている警察の南でさえ気が滅入ってしまう。
それをまだ年端のいかない彼女たちの精神的なダメージは計り知れないだろう。
「南さん……」
そんな彼女たちの精神的支柱とも言える総監督の高橋が声を上げた。
「ごめんね。また話聞かせてもらいたいんだ」
南の言葉に高橋は黙って頷いた。
「えっと………」
早速、南は言葉に詰まった。なるべく死を連想させない言葉を選ぼうとしてみてもそんな都合のいい言い方が見つからなかった。
「たぶん、最後に会ったのは私やと思います」
困っていた南に助け船を出したのは横山だった。
「昨日の夜にみんなで睡眠導入剤をたかみなさんから貰った後に私の部屋の前でちょっとだけ話したんです」
「睡眠導入剤?」
「これです。眠れない時にたまに使うんですけど……昨日は他のメンバーたちにも分けてあげたんです」
そう言って高橋が鞄から小さな錠剤が入った瓶を取り出し南に渡した。
「……ありがとう」
受け取った瓶を確かめてみても、いたって普通の市販されている睡眠導入剤だった。例えこの薬を大量摂取したところで死因と関連付けるのは難しい。
「ちなみにこれを分けたのって何時頃かわかる?だいたいでいいから」
瓶を高橋に返し続いて問いかけた。
「えっと……」
「10時半頃と思います」
「10時半か……。えっと…」
「あ、小嶋陽菜です。ぱるると同じチームに所属してます」
時間を答えてくれた小嶋が頭を下げ名乗った。
「ありがとね小嶋さん。て事は…横山さんと話したのは11時前って訳ね。それで……」
小嶋に礼を言い、再び横山に問いかけた後4人を見渡し言葉を一度切った。
「今朝の9時」