第二章
09
 衝撃的は事件から一夜明け、時刻は朝の8時前。

「おざーすっ」

 刑事課に南が戻って来た。

「おはようございます!先輩」

 PCを弄っていた東山が南に気付き挨拶をした。

「おはよ。……他の人は?」

 がらんとした刑事課を見回し東山に尋ねる。

「あぁ、まだ誰も来てないっすね。僕が一番乗りでした」

 殺人事件が起き、しかもその捜査本部が設けられているにも拘わらず誰もいない。本庁の刑事は寝ずに捜査していたであろうに……

 もっとも、そんな事を思っても口にはしない。南自身も仮眠のつもりが結局この時間まで眠っていたのだから。所詮は同じ穴の狢だった。

 自嘲気味に鼻で笑い、何の気なしに応接室に目線をやる

「応接室なら開かないっすよ。先輩!中から鍵かかってますんで無駄っす」

 すかさず東山が声を上げた。

「まだ何も言ってないだろ。……っていうか入ろうとしたのか?」

「あっ!」

「知らねぇ〜ぞ、西尾さんにバレても」

 笑みを浮かべ、コーヒーを淹れていると東山が黙っていてくれと訴えてくるが無視する。

「でも、よかったな」

「え?」

「万が一、鍵が開いてて彼女に何かあったら全部お前のせいになってたもんな」

 笑顔で東山に教えてやり、淹れたてのコーヒーを味わいながら新聞を拡げると、続々と他の者たちも集まりだした。


「……青ざめてどうしたのさ東山君?」

 猪瀬もやって来て、東山に声をかけたが、南が代わりに何でもないと答えたことで好奇の目を向けていた他の者たちも口をつぐんだ。


「そうだ!南君」

「はい?」

 自分の席に座った途端に思い出したかの様に猪瀬が南を呼び止めた。

「君は今日1日こっちの仕事はしなくていいからね」

「どういう意味ですか?」

「今日はね渡辺さんに同行していて欲しいんだよ。北嶺警視正の命令でね」

「北嶺さんが?」

「そうだよ。暗に捜査に参加しろって意味じゃないかな?よかったね」

 最後は南にだけ聴こえる様に言ってテレビを点けた。




「あっれ?おかしいっすね〜」

 猪瀬からリモコンを受け取りザッピングしていた東山が首を捻った。

「ん〜今度はどした?坊っちゃんよ」

「昨日の事件っすよ。どこもやってないっす」

 ニヤつきながら蝶野が尋ねると東山もリモコンを置き答えた。

「マスコミに報道規制してるのは当然だろ」

「そうなんすか?」

「当たり前だ。もし報道してみろよ、パニックは明白だし、模倣犯が現れる可能性もあるだろ?だから、大きい事件があった時にはたまにあるんだよ」

「は〜、なるほど」

 東山が理解してるか否かは定かでない返事をした時、応接室の扉が開いた。






■筆者メッセージ
時間を明けた割りに動きのない話でしたね……すいません

コンスタントにUP出来るよう努めます


絹革音扇 ( 2013/11/29(金) 22:34 )