02
通報を受け数分後、現場へ向かう車中。
「先輩〜、僕ら行ってやる事あるんすかね〜?」
運転をしながら、東山が助手席の南に愚痴った。
「ん〜、そうだな……。何かしらはあるんじゃないのか」
「そうね。初動捜査は本庁の"優秀な"皆さんの仕事だからね」
後部座席からトゲのある声が聞こえた。
「西尾さん。せっかく名コンビ復活なのに機嫌悪いね〜、どうしたのさ?」
南は振り向き西尾に笑いかける。
「名コンビ?冗談じゃないわ!誰のせいで昇進が遅れてると思ってるのよ!」
「それは俺のせいじゃないでしょうよ。っていうか、西尾さん昇進したいの?」
南は悪びれる様子もなく、同期の彼女に尋ねた。
「当たり前よ!何時までもあのエロガッパの下なんて居られないわ」
苛々している西尾が吐き捨てたエロガッパとは、3人の直属の上司にあたる刑事課課長の猪瀬の事だろう。
「大丈夫っすよ。西尾さん、課長も若い娘にしか興味ないと思いますよ〜」
「……東山。アンタそれどういう意味かしら?」
まだ若い東山は女性の、いや西尾に対しての地雷を知らず知らずに踏んでいた。
「まぁまぁ、2人とも喧嘩しない喧嘩しない。それにしてもさ、AKBって本当にあのAKBなのかな?」
2人を宥めた南が誰とはなしにふと、洩らした。
「そうっす!あの!あのAKBっすよ〜。いや〜、楽しみっすね!先輩」
「仕事だぞ〜、楽しむなよ。それに俺あんまり知らないんだよな、AKBって」
「あっ、それ私も〜」
1人楽しそうな東山を除いては、AKBについてはTVで見かける程度。それもそのはず、南は洋楽以外を西尾は音楽自体あまり聞かないからだ。
「え〜、2人共あり得ないっすよ。じゃ、僕が説明しますね」
その後、現場に到着するまでの数十分東山によるAKB講義がこんこん続いたのは言うまでもなかった。