第一章
02
 通報を受け数分後、現場へ向かう車中。



「先輩〜、僕ら行ってやる事あるんすかね〜?」

 運転をしながら、東山が助手席の南に愚痴った。

「ん〜、そうだな……。何かしらはあるんじゃないのか」

「そうね。初動捜査は本庁の"優秀な"皆さんの仕事だからね」

 後部座席からトゲのある声が聞こえた。

「西尾さん。せっかく名コンビ復活なのに機嫌悪いね〜、どうしたのさ?」

 南は振り向き西尾に笑いかける。

「名コンビ?冗談じゃないわ!誰のせいで昇進が遅れてると思ってるのよ!」

「それは俺のせいじゃないでしょうよ。っていうか、西尾さん昇進したいの?」

 南は悪びれる様子もなく、同期の彼女に尋ねた。

「当たり前よ!何時までもあのエロガッパの下なんて居られないわ」

 苛々している西尾が吐き捨てたエロガッパとは、3人の直属の上司にあたる刑事課課長の猪瀬の事だろう。

「大丈夫っすよ。西尾さん、課長も若い娘にしか興味ないと思いますよ〜」

「……東山。アンタそれどういう意味かしら?」

 まだ若い東山は女性の、いや西尾に対しての地雷を知らず知らずに踏んでいた。

「まぁまぁ、2人とも喧嘩しない喧嘩しない。それにしてもさ、AKBって本当にあのAKBなのかな?」

 2人を宥めた南が誰とはなしにふと、洩らした。

「そうっす!あの!あのAKBっすよ〜。いや〜、楽しみっすね!先輩」

「仕事だぞ〜、楽しむなよ。それに俺あんまり知らないんだよな、AKBって」

「あっ、それ私も〜」

 1人楽しそうな東山を除いては、AKBについてはTVで見かける程度。それもそのはず、南は洋楽以外を西尾は音楽自体あまり聞かないからだ。

「え〜、2人共あり得ないっすよ。じゃ、僕が説明しますね」

 その後、現場に到着するまでの数十分東山によるAKB講義がこんこん続いたのは言うまでもなかった。





■筆者メッセージ
次回から徐々にメンバー出していきますね。
絹革音扇 ( 2013/11/08(金) 01:41 )