二束目
第18花ーチューリップ
危うく心にしまい込んでいたことを言ってしまいそうになった。春樹君に止められなかったら言ってしまっていた気がする。

「彼の痛みを、悩みを、抱え込む闇を少しでも軽くしてあげたい」そう思っていたのは確かなこと。それから気づけば私は彼の、菊野春樹という沼にはまり込んでいった。彼にどんどんと依存していく自分をはっきりと感じていた。


それに、彼も彼で私に依存していっているのも手に取るようにわかった。彼が私を必要としてくれている。そう考えるとすごくそれは嬉しいことだった。


なんとなく、間が悪くなってしまって彼を後ろから抱き締めながら彼の右耳を甘噛みした。

「どうかしましたか?先輩」
「んーん、なんとなく!」

ポンと彼の肩を軽く叩いて彼から離れた。

「あ、そうだ。こんな感じで暮らしてるんだし、敬語やめたら?」
「んー、努力します!!」
「あ、逃げたな?」
私は彼を少しだけ睨んだ後に笑った。彼も笑っていた。




その夜、私は春樹君を強く求めた。今までにないくらい強く。
その欲望は大きくて、到底制御できるものではなかった。
それに、さっきの件もあってか私は重い女になっていた。


「んっ…、春樹君…、もっと…もっとして…?」
「こんなに美波が求めてくるなんて初めてだね。どうかした?」
「そんなこと、いいから…」

彼の唇を貪り、彼の舌を絡めとる。彼の顔に、体に触れながら。

私はもう気づいていた。私が春樹君に抱く感情の変化を。けれど、その気持ちから目を逸らすように感情にふたをする。彼が私を求めてくれるだけで充分。それ以上は今はない。だから。



「春樹君、今日は大丈夫な日だから…、あの…、そのままをちょうだい…?」
「えっ、でも…」
「いいから、お願い」

もう一度彼にキスをした。今度は触れるだけのキス。恋人同士がするような優しいキス。
私が唇を離すと、彼の目にはまだ迷いの色があったけど頷いてくれた。


「あっ…、入ってきてる…。春樹君のっ、熱が…、そのまま…。」
「俺もすごい気持ちいいよ、美波。」
そう言って彼は私に優しいキスの雨を降らせた。それだけで幸せが溢れるようで、繋がっただけなのに私は絶頂に達した。

■筆者メッセージ
閲覧数が2万を超えました!!いつも読んでいただいている読者の皆様、ありがとうございます!そして、これからもどうぞよろしくお願いします。

ストックが出来上がったので、更新しました!ストックの方ではもう「二束目」は終わって明日以降、次の章の下書きストックづくりでもしていこうかなと考えております。

では、また近いうちに!
Hika ( 2019/08/24(土) 04:24 )