二束目
第15花ーアングレカム
目が覚めると春樹君は難しい顔をしながら考え事をしているようだった。やはり彼の痛みを、悩みを、抱え込む闇を少しでも軽くしてあげたいという私の気持ちは変わらなかった。

「軽くしてあげたい」。なぜか上から目線なように聞こえるがそんな気は全くない。それに、なぜそう思うのか、私には分からなかった。



もともと彼と関係を持とうと思ったのはただの気まぐれだった。彼を選んだのは、どこか彼にある普通の人たちとは一線を画すようなオーラだった。

私は小さい頃から人のオーラだとか纏っている空気感だとかに敏感だった。それゆえに疲れてしまって体調を崩すことも度々あったのだけど、今ではそれをコントロールすることができている。


単純な興味だった。

彼が大学の後輩として入ってきた時の歓迎会がきっかけだった。偏差値のあまり高くない大学だから、大学には遊びに来ている感覚の1年ばかりだった。そういう輩は歓迎会という場で慣れたようにお酒を飲み、先輩も同期もお構いなく声をかけては「今夜どうですか」なんて言ってくる。同期もそんな感じでウンザリしていた。


客観的な事実として、私の同期の中では割と上位に入るくらいには顔はよかった。だから、その分多く声をかけられた。後輩だから無下にもできずに軽くあしらうことしかできなかった。

その日3度目くらいの席替え。その席替えで私の隣になったのが春樹君だった。彼の隣に座って少し話しただけで分かった。彼はこの場にいる後輩たちとは全くと言っていいほど違う人間だった。

どこがどうというのは感覚の話だからできないけれど、確かに私は感じた。直感というやつかもしれない。


それから私は彼のことをもっと知りたくて、もちろん恋愛とかの感情はなく、LINEで雑談したり、大学で会えば少し立ち話するくらいにはなっていた。春樹君に私と同じバイトを紹介すると、すぐに「やります!」と返事が返ってきた。


今、彼は私に依存している。それを私はひしひしと感じながら受け止めている。むしろ嬉しい重みかもしれない。けれど、私は彼が私に依存するもっと前から彼に依存している。そしてもっと言えば彼が私に依存しているよりも私は彼に依存してしまっている。


だから彼が望むことはすべてしてあげたくなってしまう。彼にとっても私にとっても喜ばしいことではないかもしれない。


彼の居場所が私のいる場所であるように、私の居場所は彼のいる場所だから。

■筆者メッセージ
久々に感想などお聞きしたいなぁなどと思っております。Twitterでも、コメント欄でもどちらでもお待ちしております。ぜひよろしくお願いします。
Hika ( 2019/08/12(月) 23:57 )