後日譚ー飛鳥編ー
私は病室から窓の外の青空を眺めていた。一定のリズムで刻まれる電子音。
昨日、私は目を覚ました。あの日から1週間が経っていた。あの、優暉と一緒に死んだはずの日。さっき美彩姉がお見舞いに来た。すごくやつれて見えた。擦り切れたみたいに。私は全てを話した。3年前の真相。1週間前の事実。美彩姉は明らかに動揺していたけど、「そうなんだ。話してくれてありがとう」とだけ言い残して帰っていった。あまりに淡白だった。
どうして私だけ助かってしまったのだろう。どうせなら私じゃなくて優暉が助かっていてくれれば、優暉の中で私は生きていられた。1つになることができた。なのに。これも神のいたずらなのだろう。神様はどうしても私と優暉を1つにさせたくなかったのか。それとも未央奈がそうしているのか。それともただの偶然か。考えても答えの出る問いではなかったが、いつまでも考え続けてしまう。考えたって意味が無いことだって分かってはいても。
空は相変わらず晴れていた。私はどこで間違ってしまったのか。優暉を好きになったことだろうか。優暉と一緒に死のうとしたことか。どれも欲深いことではないはずだ。どこで道を踏み外して脇道へ逸れてしまったのか。優暉ならどこか分かるかもしれない。けれど、優暉はもういない。私が殺したから。そこで私は思いつく。
『 優暉に会いに行けば良い』
名案だ。何故思いつかなかったのだろう。いつも私は優暉の背中をずっと、ずっと追ってきたじゃないか。私が優暉の隣を歩けないで、背中を追い続けて終わるのは癪に障るが、文句は言うまい。そう決めたならばすることは1つ。私は病室を見回した。そして見つけた。美彩姉が置いていった果物籠と一緒に置いてある果物ナイフを。
迷わず私はそれを首に当てて素早く引いた。シーツに血が飛び散った。優暉が呼ぶ声が聞こえた。何度も、何度も私は繰り返した。その手が動かなくなるまで。優暉が「早く」と言っている。ついでに未央奈も私を呼んでいる……。
看護師が異変に気づいて飛鳥の病室に駆けつけた時には、リズムを刻まなくなった電子音がいつまでも響いていた。ベッドの中央には、血の海の中で安らかに眠る天使がいたという。