4章
01
「おう、おう、えっ、おとんが倒れた⁉」

周りの先生が俺の方を向く。

「おう、おう、わかった、すぐ行く」

電話を切った。

「佐々木校長、早退させてください」

「話は聞いていました。菜緒さんを連れてお父さんの元に向かってください」

1年2組の教室に向かった。

ガラガラガラ

高瀬先生が授業中だった。

「高瀬先生、ちょっといいですか?菜緒、帰りの準備をすぐしなさい。大阪に行くぞ」

「なんで?」

「お父さんが倒れたんだ」

「ええっ」

教室がざわつく。

「玄関で待っているからすぐに来なさい!」

教室から出る。

カバンに荷物を入れ、職員室から出て行く。

「失礼します」

玄関に向かうと菜緒がいた。

「お待たせ、行くか」

俺達は駅に向かった。

電車に乗って東京駅に向かう。

『東京、東京、ご乗車ありがとうございます』

すぐに新幹線の切符を買い、ホームに出た。乗り込むと席に着く。

「お兄ちゃん、お父さん大丈夫かな?」

「おとんは大丈夫だよ。おかんに電話してくるから」

デッキで電話をかけた。

「もしもし、おかん。今新幹線乗ったとこ。新大阪には1時半に着く。うん、駅で源さんが待っているんだな。わかった、切るよ」

電話を切って席に戻る。

「新大阪についたら、源さんが迎えにきてくれるって」

「源さんなら安心だね」

新幹線は西に向かってひたすら走る。

源さんはおとんの会社の従業員。うちのおとんは大阪で小坂金属加工という工場を経営している。従業員はおとん含め6人で、源さんは祖父の代からいて小さい時お世話になっていた。


チャンチャンチャンチャチャン

『まもなく新大阪です』

「菜緒、降りる準備しろ」

「うん」

ホームに入りドアが開く。改札を出てロータリーにきた。

見渡すと、小坂金属加工と書かれた白い軽自動車があり、そこに源さんがいた。

「源さん!」

「おお、裕翔くんに菜緒ちゃん。早く車に乗って」

車に乗ると出発した。

「久しぶりやな」

「源さん、おとんに何があったん?」

「奥さんの話によると、朝体調が悪くて風邪や思ったんやけど、社長がトイレ行こう思った時に倒れてな。救急車で運ばれたんや」

「お父さん、大丈夫かな?」

「若い頃、西校の狂犬呼ばれてた社長やぞ。大丈夫やて」

「そうやで、菜緒。おとんは大丈夫」

「そうやね」

病院に着いた。おとんは手術中らしい。手術室の前にはおかんと会社の人が全員来ていた。

「おかん」

「裕翔に菜緒、今手術中よ」

「そうか、で何の病気なん?」

「それがな…」

おかんが話そうとした時、手術室から先生が出てきた。

「手術は成功しました」

「よかった。で、何の手術なんですか?」

「盲腸です」

「へ?盲腸?」

よかった。いや良くないが、盲腸は友達が言うには簡単らしい。

「お父さんは明日には退院できますよ」

「よかったね、お兄ちゃん」

菜緒が微笑んだ。



ジェリー ( 2020/05/03(日) 03:00 )