01 あれから1年。
あの日の告白から1年。雅史と咲良が付き合い始めて1年が経った。自然に将太やまりやにもばれてしまったので、もう隠す必要もなかった。
「結婚するんですか」
「はい、雅史と結婚することを課長にお伝えしたいと思いまして。それから」
スッと立花のデスクに退職願を出す。
立花は不思議そうに退職願を手に取る。
「退職願を持ってきました。寂しいですが、東京エクスを去ることにしました」
「どうしてですか。咲良ちゃん」
「彼の子供がお腹の中にいるんです。先日、病院に行ってきてエコーを撮ってもらって分かったんです。だから、私は子供を育てることに専念したいと思います」
「なるほど、わかりました。ですが、明後日まではちゃんと出勤してください。それから明後日は咲良の送別会をします。必ず参加してください」
「送別会?」
「僕の家でしましょう。僕の奥さんが沢山の美味しい料理作ってくれますから」
「はぁ、分かりました」
立花は将太と共にどこかへ出かけていった。誰もいなくなったオフィスでまだそこまで大きくなってないお腹を優しくさする。
両親は喜んでくれた。なんて言われるのか反応が怖かったが、雅史と相談してちゃんと話すべきだと言われた。勇気を持って話したら、素直に喜んでくれた。
3ヶ月後には結婚式も控えている。両親を東京に招待して行う結婚式。短大時代の友達も地元の友達も祝福してくれた。みんなが自分のために東京まで来てくれる。
「楽しみだね」
お腹の中で少しずつ育っている子供に語りかけるように言って、仕事を再開した。
雅史がまとめてくれた次の会議用の書類を会議ごとにそれぞれファイルの中に分ける。
窓のそばにある風鈴が風に揺れて、チリンチリンと涼しく感じる音を奏でた。