05 再び繋がった家族。
「雅史、ほんとにすまなかった」
俺の控え室で俺と李奈、翔伍。それから雅史の父親に母親。そして兄の正純。最初に父親が深く頭を下げる。それに続くように正純も母親も頭を下げる。
「父さんは知らない間にお前を傷つけてしまっていた。許してくれ」
「ごめんなさい、雅史。翔伍くんからあなたのことについては連絡をもらってたの。住所も教えてもらったのにあなたに会いに行けなかった。子供に会いに行くだけのことも出来なかった私はもう母親失格ね」
「ごめん、雅史。何も言わずに消えてしまって。自分と向き合うのが怖くて俺は逃げてた。俺を慕ってくれたお前を裏切ってしまった。最低な兄ですまなかった。許してくれ」
正純に至っては土下座した。
床には涙の粒が落ちて溜まっていく。
「顔を上げてくれないか」
雅史は頭を下げ続けてる3人の顔を無理やり上げて目と目を向き合って話し始める。
「最初はあんたらが憎かった。俺を捨てて俺を1人にしたあんたらを許せなかった。でも、それでもあんたらは俺の家族だろ。家族だったら、今日は俺と李奈の結婚式なんだからおめでとうぐらい言ってくれよ」
唇を噛んでこらえている父親。口元を手で抑えて涙を流す母親。そして、雅史がゆっくりと兄の正純の方へ近づいて手を出す。
「握手」
「俺を許してくれるのか」
「当たり前だろ」
強く、手を握り合う。
離れていた家族がまた繋がった。
家族という言葉が、自分の思っていたものよりもあたたかく感じた。