04 まりやの気持ち。
松岡がどんな人か気になる。
でも、松岡はまだアタシに対して完全には心を開いてない。見てわかる。
松岡と2人で飲んだ日。
半分冗談、半分本気のあの言葉。
「会社に内緒で、アタシたち付き合ってみない?結婚前提のお付き合いを」
あの言葉は今でも恥ずかしい。
よりによって、年下の松岡に。
付き合わない?なんて言葉。
普通だったら、絶対言わないのに。
結婚前提もさりげなく付けて。
松岡は返事をしてくれない。
それもそう、だって松岡だし。
優柔不断で、のろま。
おまけにヘタレ。
まさに今どきの男。
でも、松岡は真面目。
バカがつくほどの真面目。
仕事に対しては、まっすぐ。
そんな松岡がカッコよく見えた。
バカみたい。
こんな男を好きになるなんて。
アタシも見る目がないなぁ。
どうして?
誰か、教えて。
「…りやさん。まりやさん」
「え?」
「着きましたよ、行きましょ」
もうスーパーに着いちゃった。
もっと松岡の横顔を見たかったな。
「どうしたんすか?」
なんだか、ぶっきらぼう。
ちょっと松岡を試してみようっと。
「別に。もういいっ」
松岡を振り切る。
機嫌の悪いフリをしてみる。
「なんで怒ってんすか」
「怒ってないし」
「いや、怒ってますって。もし俺がまりやさんの機嫌を損ねるようなことをなんかしたんなら謝りますんで」
「だから、怒ってない」
松岡のオロオロした表情。
すっごく面白い。
笑いを堪えて、怒ったフリを続行。
スマホの録音をオンにした。
面白いんだろうなぁ。
謝り続ける、松岡の焦ってる声。