04 バカまじめ。
日曜日からか、家具販売店まで李奈と並んで歩いていると家族連れやカップルなど多くの人が行き交っていた。
「お前バイトとかしないの?」
「んー、めんどくさいからやんない」
「変わんねーな。相変わらず」
「杏奈ちゃんが今日は出張で神奈川行って、帰ってこないからさ。夕飯食べたらついでに泊まっていきなよ」
「アホか。明日は祝日だけど、咲良と今度出版する本の著者さんとのアポの日なんだよ。翔伍も留守番してるし」
世の中は明日も休日だが、今年は富山に帰省すると決めていたので休みの日も出来る限り出勤して仕事を片付けることに決めた。きついけど、お盆休みを増やすためだ。
「バカまじめ、だね」
「こら、CMみたいに言うな。しかもあのCMは宅配便のCMじゃねぇか」
「でもさ、金髪に染めて丸坊主にしたらもう瓜二つだよ」
「俺が老けてるから似てるみたいに言うな。まだ24歳だろが、俺も李奈も」
「私はまだまだ若いもーん。雅史はもうすでにおっさん化進んでるけど」
「テメー、黙って聞いてりゃ」
「わー、おっさんが怒った」
「おっさん言うな。お兄さんだろが」
「いや、それもないな」
李奈の後頭部をスパーンと叩く。李奈はずっと爆笑している。勝手におっさん扱いされるし、ある大御所芸人には瓜二つって言われるし。
自慢じゃないけど、その人に似てるって言われたことは1度もねーよ。
「私アイス食べたいなー」
目の前にはアイスクリーム屋さん。李奈は駆け寄ってじーっと見つめている。
くぅぅ、騙された挙句にアイスかよ。
「…この野郎」
聞こえない声でボソリとつぶやいたあとに目の前にあるアイスクリーム屋へ向かった。