02 Call Me。
飲み会を終えて、帰宅すると翔伍はいなかった。まだ夜8時だし、明日は休みだから別にそれは構わないけど。ようやく一人きりの時間が過ごせる。こんなに嬉しいことは無かった。
ソファに座った瞬間、スマホから着信音が流れる。画面には《李奈》と表示されていた。
「もしもし」
「やっほー、雅史」
「どうした?こんな時間に」
「あぁ、そうそう。明日時間ある?良かったらちょっとだけ付き合って欲しいんだけど」
「あぁ、別にいいよ。分かった」
「時間とかはまた後でメールする」
「うん、それじゃあ」
電話を切る。また李奈と二人きり。
今度はどこに連れていかれるのか。
別にどこでもいい。李奈といると自然になれる自分がいた。笑顔になれる自分がいた。そんなじぶんにしてくれる李奈が好きだった。
でも、俺たちはあくまで親友だ。今更もう1度だけ戻ることなんて出来ない。ただの地元の幼なじみ。俺が仮にまりやさんか咲良と付き合ったら李奈は祝福してくれるはずだ。
「たっだいまー!」
翔伍が帰ってきた。両手には大荷物を持って長いため息をついた。今度は何事だ。
「お前、今度はなんだ」
「聞いてくれちゃいますか?今度の休みさ、みんなでバーベキューしようぜ。俺と雅史と李奈とあと何人か呼んでさ」
「あ、そうだ。この前来てくれた宮脇さんだっけ?バーベキューやる時さ、連れてきてよ。あのキャラ好きなんだよね」
「は?お前本気かよ」
「あぁ、違う違う。あんないい子だったしバーベキューの時に来てくれたらすごく助かるだろうなって。俺たちってがさつだから」
「いや、自信持って言うことじゃないけど。まぁ、考えとくよ」
「さすが雅史だ。でもよ、明日は何もなくて暇なんだよ。助けてください」
「知るか。俺は用事あるから家を留守にするから留守番よろしく。風呂行ってくる」
ひとりで過ごすというショックから床に倒れ込んだ翔伍を無視して、風呂場へ向かう。
風呂から上がっても、翔伍は床に倒れ込んだまま一直線を凝視していた。