13 やっぱり再会して良かった。
「じゃあ、今日はありがとうね」
「あぁ、こっちこそ」
入山さんの家の前まで李奈に教わりながら向かう。そして、ようやくたどり着いた。
「あの…この前はごめん。再会しなきゃ良かったなんて雅史の気持ちも考えずに言っちゃって」
「あぁ、別にもういいよ」
「今日分かったの。雅史はやっぱり雅史だった。相変わらずぶっきらぼうだけど、やっぱり優しかった。仕事も楽しそうにしてて安心した」
「俺も李奈と昔みたいに戻れて楽しかった。やっぱ、俺達は親友だもんな」
「うん、親友だもんね。永遠の親友」
家の前で会話が盛り上がる。地面をこつこつと小気味よい音が近づいてくる。スーツを着た入山さんが帰ってきたようだ。
「杏奈ちゃん、おかえり」
「ただいま。あれ?今日は松岡くんも一緒なんだ。何年ぶりだろう、りっちゃんと松岡くんの夫婦漫才」
「いやいや、入山さん。俺たちの関係は夫婦漫才するような間柄じゃない」
即座に否定をする。入山さんにとっての俺達は夫婦漫才して周りを笑わせるような感じと捉えられているが、断じてそれはない。
「相変わらずだね。元気そうで良かった」
「入山さんはずっとここ?」
「うん、ITのちょっとした会社に就職してね。今はまだまだ奮闘中」
「頑張ってんだ。すげーね」
「じゃあ、りっちゃん。帰ろっか」
「じゃあね。おやすみ、雅史」
「あぁ、おやすみ」
背中を向いて2人は家に入っていった。俺もさっきの景品の袋を手に持って家に帰る。
「あいつら、大丈夫かな」
また酒を飲んで肉を食って盛り上がってるであろう我が家。翔伍とバカ4人組はなんとかしてもらいたい。一応、管理人さんと交渉しまくって俺が借りてる部屋だから。
「ただいまー」
案の定、バカ4人組は全員酔いつぶれていた。翔伍はテーブルに突っ伏している。なんとか最後の力を振り絞って片付けはしたらしい。そこだけは褒めてやる。
「ったく、仕方ねーな」
バカ4人組と翔伍にタオルケットをかけてやる。
そして、俺はベッドに倒れ込んで今日の李奈とのデートを思い出した。
バー、ゲーセン、咲良とバッタリ会ったり。
ゲーセンは楽しかった。李奈の笑顔がたくさん見れたし、俺自身もすごく笑った。
東京に来てから、いつの間にか下手くそな笑顔が更に下手くそになった挙句、愛想笑いさえも身につけられない俺。李奈はそんな俺をまた笑うかもしれない。
それでいい。くだらない口喧嘩をして、2人で笑う。親友に戻れたんだ。何ももう心配することなんてない。李奈はこの夏に資格を取ると言っていた。李奈が俺を応援してくれていたように今度は俺も李奈を応援したい。
「寝よっと」
ベッドに倒れ込んで眠る。
眠気が急に来て、あっという間に夢の中へと導かれていった。