遠恋









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第2章
12 咲良の妬み。
妬ましい、あの人が妬ましい。


すぐに分かった。
きみの隣にいるのは川栄さん。


雅史のそばに誰よりもいた自信があった。
でも、あの人は私をあっさりと超えた。


楽しそうに話すきみの姿。
どうしてそんな楽しそうなの?


まだ好きなの?
もう忘れるって言葉も嘘なの?


お願いだから、離れてよ。
そんな楽しそうにしないで。


耐えられなくなって、きみの名前を呼ぶ。


「雅史っ!」


すぐに振り向いてくれた。川栄さんは笑顔から悲しそうな表情になる。


「あぁ、咲良。どうしたの?」


「あの…まりやさんと飲んでて。それで、家も近いから歩いて帰ってたの」


「あぁ、そうなんだ。久々に李奈と2人きりでいろんなとこ行ってさ」


2人きり?いろんなところに行った?
私はそんなの全然しないのにどうして?


「あ、あの…私家こっちだから。じゃあ、また明日会社で」


気持ちとは裏腹に行動が逆になる。
2人と逆の方を向いて、自宅まで歩く。


私は雅史が好きなのに。
雅史はあの人が好き。


どうして伝わらないの。
好きって言ってくれないの。


私は好きなのに。
どうして応えてくれないの。


パンプスで道の小石を蹴る。
その小石は道をコロコロ転がるだけ。


やがて、小石は止まる。
涙で目の前が見えなくなる。


一粒の涙が、頬を流れた。

ガブリュー ( 2015/11/30(月) 21:57 )