ケツの穴から登場!僕うんこマンです
「それで連れて帰っちゃったのか?」
ミクロイドのヤンマは呆れながらマメゾウの傍らにいる緑色のうんこ、「G(グリーン)・うんこマン」を眺めていた。
「だって、言葉をしゃべるんだぜ?」
「言葉ったって…」蝶をモデルにした女性のミクロイドであるアゲハが心配そうに口をはさむ。
「そうだよ、さっきからこいつ、『メットールダウン』としか言ってないぜ」
ヤンマが腕を組んで文句を言う。
「こいつの名前じゃね?」完全に昭和レトロな名前のマメゾウが今風の言い方で答えた。
三人は困惑しながらうんこマンを見上げた。虫サイズのミクロイドからすれば、うんこマンは人間よりはるかに小さいとはいえ、自分たちの三倍から五倍、体積でいえば七倍近い大きさがあるのだ。
ちなみに、「メットール」とは、ロックマンシリーズでお馴染みのヘルメットをかぶった一頭身のザコ敵である。うんこマンは、ただ淋しくて「メルトダウン、メルトダウン」と叫んでいるだけなのだが、まだ活舌が悪く、感情表現もうまくできないので、上手く伝わらないのだ。
「コンキョーハ?メットールダウン」
「ところで、このうんこを残していったスパイの方は?」
「あっ」マメゾウは今はじめて気付いたという顔をした。
「あっ、じゃねえんだよ。お前の任務はそいつの後をつけることだろうが」
ヤンマが怒る。
「それにしても、どんどん変なやつが入ってくるな」
マメゾウが他人事のように話す。
ミクロイドは高度に知能の進化した蟻「ギドロン」によって縮小化され奴隷化された人間(元人間)だが、ヤンマ・アゲハ・マメゾウの三人は、ギドロンの首都「ギドロニア」から逃走し、まだギドロンの存在を知らない人間達にその恐ろしさを警告し、できれば人間とともにギドロンを滅ぼそうとする者たちである。
「とりあえず、霧雨さんに会ってくる」ヤンマが動き出した。
「それがいいわね」アゲハがうなづく。
二人が出て行った後も、マメゾウはぼーっとうんこマンを見ていた。
「ナとゴミを足すと和み。お前は良い奴!ガハハ」
「あっ、新しいことしゃべった!」びっくりしたマメゾウも二人を追う。
「おーい!」
後には、うんこマンだけが残された。
「ケツの穴から登場!僕うんこマンです」
うんこマンはひとりぼっちで自己紹介した。