第四話 喧嘩界神話(「Mythology of Kenka」より)
塾長の帰還(「apocalypse」喧嘩大戦記)
「はっ…はっ…はっ…」

粉のような砂が舞う、肌色の地平の彼方。豆のように小さい人影が、こちらへ向けて一心不乱に走っている。

集落の入り口へとたどり着いた彼は、汗だくの体も気にせずに、怯えた顔で、クチをめいいっぱい開いて叫んだ。

「塾長が…。じゅ…塾長が帰ってくるぞおおお!!」

肌寒くなってきた、秋の出来事であった。


ここは、人諍。HKJと同期でありながら、すっかり寂れ、今では人も寄り付かない、弱小喧嘩師の集落となっていた。

そこに響いた一報は、人諍メンバー全員を恐怖に陥れた。

「な…なんで塾長が今更??」
「塾長は保健所に連れて行かれたはずじゃなかったのか??」
「わからん…わからんが、塾長が居たんだ!もう、こっちに来るぞ!!!」
「落ち着け!とりあえず、とりあえず幻夢を呼ぶんだ!!」


鋼のように硬い、銀色の体毛。ぶらりと下ろした腕は銀色の体毛に包まれ、手はもはや、手としての質感はなく、巨大な肌色の塊にしか見えない。三メートルはあろうかという巨体に、岩のように付いた筋肉。赤く光る目に、長い鼻の下。クチから飛び出る、ハンマーのように重々しい牙。

怪物―――。

これ以外に言い表しようのない怪物ゴリラが、ゆっくりと人諍へと歩みを進めていた。巨大な足を地面につける度に、地平が悲鳴をあげ、砂が逃げ出した。

人諍では全員が集落の入り口へと集まり、地平を見守った。彼方から、小さい影がダンダンと大きく成長し、巨大な怪物へと姿を変えてゆく姿を、ただ見つめる事しか出来なかった。

ついに人諍へたどり着いた怪物は、両手を大きく掲げ、雄たけびをあげた。

「グオオオオオオオオオ!!!!」

その一声で、一瞬にして人諍メンバー全員が目を怯ませる。
怪物は牙がむき出した歪んだクチを、さらに歪ませ笑った。

「今日から、ここが、平静喧嘩塾となる」
 
 
塾長が…帰ってきてしまった…。


■筆者メッセージ
本節は、「apocalypse」(https://seesaawiki.jp/w/white_silver_6/)に掲載されている「喧嘩大戦記」をそのまま引用転載し、見やすいように改行しただけのものです。作者は「jukuchoo 2008年10月15日(水) 16:01:40」とあるので、おそらく「塾長」本人であると思われます。
 
「人諍」とはどこなのか?「幻夢」とは誰なのか?塾長は何故保健所に連れていかれたのか?

多くの謎を孕んだこの文章の続きをいろいろ探してみたのですが、私にはとうとう見つけることができませんでした。
アメリカン・クルーソー ( 2023/11/15(水) 16:59 )