シリーズ『大論界』(5):「ゴッドストーリー〜刀葉林の叶姉妹」











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第三話 「論破システム」爆誕!!
「写像」とは何か
2010年5月2日、勝間和代がMCを務めるBSジャパンの情報番組「デキビジ」。プレミアムビジネス対談のコーナーで、2ちゃんねる創始者の西村ひろゆきをゲストに招いて対談が行われた。


勝間(呆れたように)「……インターネットの話をしてるんですよ 今(笑)」

ひろゆき(にこやかに笑いながら)「インターネットの話ならインターネットの話をしてください。なんか今、リアルの話をしだしたのは勝間さんですよね?」

勝間「違うんですよ! リアルの話に対してのインターネットが『写像』であることに−−」

ひろゆき「『写像』?」

勝間「………。(突然無言になり笑う)」

ひろゆき「なんですか? 『写像』って…」

勝間「……だめだコレ(笑)」



「写像」とは何であろうか?(goo辞書)


1 対象物をあるがままに写して描き出すこと。

「人生の精確なる―ということを」〈抱月・文芸上の自然主義〉

2 物体から出た光線が鏡やレンズなどによって反射または屈折されたのち、集合して再びつくられる像。

3 数学で、二つの集合A、Bがあって、Aの各要素aにBの一つの要素bを対応させる規則fをAからBへの写像といい、f:a→bと書く。


最も厳密な数学的定義(3)であっても、この定義だけでは「全射であり単射でもある写像(全単射)」「全射であるが単射ではない写像」「単射であるが全射でない写像」「全射でも単射でもない写像」の区別をつけることはできない。

『大論界』で問題となる「写像」とは、「異世界Aで起きた出来事が、異世界Bで起きる別の出来事と対応している」という事態を指す。異世界、「Different world」の頭文字をとって、D:A→Bと表す。数学的な「写像」と同じく、「一対一」と「多対一」の対応関係は「写像」であるが、「一対多」の対応は「写像」ではない。

大論界における「写像」は基本的に「出来事」と「出来事」の対応である。このうち、ある「出来事」を1つの「個体」として取り扱う時、「個体」と「個体」の対応を「転生」と呼ぶ。

もちろん、「出来事」と「個体」の対応を考えることはできるが、それは定義上「転生」の問題ではない。「個体」と「出来事」の対応についても同様である。

つまり、「転生」とは、異世界間の「写像」のうち、「個体」と「個体」の関係だけに用いられる概念なのである。

いま私は「異世界」という言葉を使い、定義においても「異世界A」「異世界B」という言葉を用いたが、もちろん、この「異世界A」と「異世界B」が同一の時空間に存在していることもありえる。この場合、あらゆる出来事が同一であればそれらを「異世界A」「異世界B」として区別することはできないが、重なっていても起こる出来事がわずかでも違えばそれらAとBは「異世界」である。たとえその違いが素粒子レベルで起きたごく些細な出来事であっても、とにかく違いがあれば両者は「同一の時空間を共有する異世界」ということで区別できるのである。

ロシアの軍事ブロガー、エカテリーナ・アグラノビッチの事例を紹介しよう。

ウクライナ東部ドネツク州出身のエカテリーナ・アグラノビッチはロシアの軍人アグラノビッチ少佐の娘で、有名な軍事ブロガーであるが、同時にロシア喧嘩界トップクラスの美少女喧嘩師である。SNS「テレグラム」の登録者数は75万人を誇り、2023年6月13日に行われたプーチン大統領と従軍記者・軍事ブロガーの会合では、プーチンの右隣に座った。

「2014年、私は15歳でした。父と叔父は戦争に行く決断をしました。私達家族も家を離れる事を余儀なくされました。母と私は難民キャンプに住んでいました。その後、ドネツクに移り住み14年から15年にかけてすべての爆撃を経験しました。父は5回負傷し、4月には父の弟である叔父を亡くしました。今、私の家族は全員が前線に出ています。私はインフォメーション、兄は戦場記者で、兄と私はドンバスで社会派ビデオや、戦闘員や国民を支援するアーティストのミュージックビデオを撮影しています。今、ドンバスの住民は基本的に全員、最前線におり、私達はとてもとても疲れています。国民投票を本当に8年半も待っていました。新鮮な空気のようなものです。私達にとっては本当の祝日です。ただ何千人もの人がこの日を迎えるまで生きられなかった事が問題なのです。本当にありがとうございました。この後、平和になる事を信じています」

このように国家と父を愛するエカテリーナ・アグラノビッチであるが、プーチンとの会合の後、ささいなことで父親と口喧嘩をした。そして自分の部屋へ引きこもり、パソコン椅子の上で三角座りをしていたのである。その時、フッと後ろを見ると、普段は白く塗った壁しかないところに見たことのない白いクローゼットがあり、扉が開いていた。

「えっ?」

不思議に思ったエカテリーナは近づいてみた。

「なにこれ?」

ガオン!!

嵐のような衝撃とともに、エカテリーナは気を失う。

次に目を覚ました時には、薄暗い地獄のような景色の異世界に転生していた。突然、背後から何者かが現れたかと思うと、エカテリーナに声をかけた。

「かわいそうに。このクローゼットモンスターに取り込まれたんだね」

振り向くと、そこには東洋人とみられる美しい少年の姿があった。年齢は十代半ばくらいだろうか。黒い髪に整った顔立ちをしている。足元には世にも醜い怪人が口から血を流して死んでいた。

「君がここにきて一番最初にやらなければならないことは、僕に名前をつけることさ」

エカテリーナは唖然として少年をただ見つめていた。

「まずは僕に名前をつけて」少年は言った。

「名前?」エカテリーナは周りを見渡した。薄暗い曇った空を透かしてクリーム色の光が地上にさしていた。
「光…ええと…」曇っているのか晴れているのか、よくわからない空から、霧雨がやさしく、そして哀しくエカテリーナに降り注いでいた。

「そうね、『霧雨』でどう?」エカテリーナがそういうと
「まあ、そうなるよね」と霧雨は言った。


■筆者メッセージ
「デキビジ」の会話は「名トークログ」より引用
http://blog.livedoor.jp/beta_bore-meitalk/archives/45102781.html
アメリカン・クルーソー ( 2023/10/15(日) 17:55 )