第二話 幻獄四天王、動きます。
幻獄軍団、全滅。
「まさか…」ゆっくりと振り返った黒うさぎの身体は、凄まじい垂直の力によって上下に押し潰され、大量の血を噴出しながら円い板のようになった。
 
「ヒャアァゥァッ!」それを見た喧嘩師の軍団は、叶姉妹を殺そうと殺到する者と、すぐに反対方向に逃げ出そうとする者に別れた。

その、道なりに一列に並びつつ、こちらとあちらに分かれようとする一団の中を、両手を左右に広げた叶恭子が疾走する。
ドガーッ!バリバリバリ…稲妻のような凄まじい音をたてながら、ほとんど飛んでいるかのように手を広げた恭子のあとには、ポンポンと綺麗な切り口ではねられた喧嘩師たちの首が次々と地面に落ちていった。血しぶきをあげる首無し死体がボーリングのピンのように倒れていく。

「な、なんだあ!なんなんだあ…」パーロンマスクはその様子を、腰を抜かし道の真ん中に座り込んだまま、おしっこを漏らしながらただただ眺めていた。

ザッザッザッ…

そこへ叶美香が歩いてきた。手には死んだ兵から奪った短刀を携えていた。

「切腹しなさい」

美香は短刀を投げてよこした。パスッ、カラカラ…
パーロンの前に短刀が転がってきた。

「え?」

「惨殺されるよりましでしょ。はやく死になさい」

「えっ、え?なんで?いや、というか…」

パーロンマスクと叶美香は少しの間、見つめあった。
そこにあったのは、絶望より暗い感情だった。彼女は切腹など望んでいない。自分で殺すつもりなのだ。では何故、切腹を勧めたのか。ただパーロンの絶望を見るためだ、味わうためだ。

それを認識したとき、パーロンの中で、何かが終わった。

「いやだーっ!!」パーロンは叫んだ。
「死にたくねえよ!死にたくねえよ!」ボロボロ涙を流して泣き叫んだ。

まだ何もされてない、指一本触れられてもいないというのに、自分が迎えるであろう「死」の光景を何通りも想像して激痛にのたうちまわっていたのだ。

「アアーッ、痛えよーっ!死にたくない死にたくねえんだよーっ!」

『幻獄』に転生してくる喧嘩師には(他の一般住民と比べると)ほとんどの人間に前世の記憶がある。従って、死んでも五割以上の確率で転生できることを知っている。この場合、恐怖は地獄の亡者たちのものと同じだ。何度も何度も殺される。殺されても生き返ることは知っている。だから地獄の亡者は死ぬこと自体が怖いのではない。「殺される」ということ、その絶対的事実がもたらす精神的・肉体的苦痛が怖いのだ。

「アアアアアアアアアア……ッ!」
もうパーロンの声はかすれきっている。それでも地面をころげまわりながら、のたうちまわっていた。

最初は面白そうに見ていた美香もさすがに気味が悪くなり、少しイラついてきてもいた。

「いい加減にしなさい。自害するのが無理なら仕方…」
「わあああああああ……!!」

転げまわっていたパーロンマスクは、いきなり美香に飛び掛ってきた。

ドサッ

油断していた美香はうしろに仰向けに倒れ、パーロンがそこにのしかかってきた。

「わあああああああ……!!」

パーロンは泣き叫びながら、美香のおっぱいを両手でガシッとつかんでムニュッと揉んだ。手のひらでグワッと圧迫された白いおっぱいは、四本の指との親指の間でムッチリとせり上がり、パーロンは親指で頂点の乳首を何度も弾いた。

「わあああああああ……!!」

もう一度叫ぶと、パーロンは美香のおっぱいにむしゃぶりついた。大きく頬張り、口の中で舌を何回転もさせて、レロレロ乳首を弾き続けた。

ドバァッ!!

その時、パーロンマスクの頭が真っ二つに割れ、腹のあたりまで大きく裂けた。
夥しい血があふれ、美香の顔を真っ赤に染めた。

「美香さん、なにやってるの〜」

恭子があきれたように、そこに立っていた。

「いや、あの、これは…」
美香は恥ずかしそうに、しかしどこか嬉しそうに立ち上がった。

ピーピーピーピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピピ…
空高く舞い上がったヒバリのさえずりが聞こえてきます。



しばくして獄卒ひよこ餅の「時間を戻す装置」で甦った金髪のフランチェスコは、「ああ〜ああ〜」とあらぬ声をはりあげて嬉しそうに笑うのであった。


アメリカン・クルーソー ( 2023/10/11(水) 01:01 )