第二話 幻獄四天王、動きます。
ヤマアラシのフランチェスコ
はたして、女二人を連れた金髪の喧嘩師は、草原を貫く一本道をずんずん歩いてきた。
 
パーロンマスクは、舌がパッサパサに乾燥しているのに気づき、酸っぱいものをイメージして唾液を意識的に分泌した。
 
草原の一本道に現れた金髪の喧嘩師は、まるで救世主かポルトガルの宣教師のようだった。女二人と金髪の救世主。どこか異質で、怪物ばかりのこの幻獄の中でも異次元の存在のように見えた。セルシアと黒うさぎは草むらに身を隠し、セルシアは少し下品な笑みを浮かべていた。

金髪の喧嘩師たちが近づいてくるにつれ、パーロンマスクの胸はドキドキと高鳴った。彼はその緊張感を抑えつつ、彼女たちのこれからの行動や言動について考えていた。彼女たちは叶姉妹と名乗っていたが、まさか本当にその叶姉妹と同じ存在なのだろうか。

一方、セルシアと黒うさぎは、その金髪の喧嘩師たちに対する状況を計算していた。喧嘩師の目的や力量、そしてそれぞれの要素がどのように動くかを見極めなければならない。セルシアの冷静な視線は、彼女たちの動きをじっと追っていた。

金髪の喧嘩師たちは道を進みながら、パーロンマスクの立つ位置に近づいてきた。パーロンマスクは少し息を吸ってから、堂々と立ち上がり、彼女たちに向かって歩み寄った。

「おい、君たち。ちょっと待ってくれ」とパーロンマスクが声をかけた。
 
パーロンは手で下向きの三角形を作り、自分の股間を強調するポーズで恭子と美香を交互にみた。
 
恭子と美香は顔を見合わせ目笑(もくしょう)を交わす。そして、エロく腰を振る歩き方で、ゆっくりとパーロンマスクに近づいていった。
 
「まだだ!」セルシアは出ようとする向かいの軍勢に向かって目で叫んだ。
 
「くそお、まだか」黒うさぎは焦れていた。はやくヤリたくて仕方がないのだ。
 
恭子がパーロンマスクの股間の盛り上がりを見て舌なめずりをした瞬間、セルシアの「いまだ!!」という合図とともに、無数の矢が空を駆け、放物線を描いてグッドルッキングガイに突き刺さった。

ヤマアラシのようになったグッドルッキングガイは、そのまま後ろにドウッと倒れた。

『フランチェスコ!!』

恭子と美香が同時に叫んだ。あれほど酷い暴行を加えながら、それでもグッドルッキングガイを愛していたとでもいうのか。
 
セルシアと黒うさぎを先頭にした喧嘩師たちの集団が、道の左右からわらわらと沸いてきた。

「なんだ、『ひよこ餅』を倒したっていうから、もっとできるのかと思ったが、ただのデクノボーじゃねえか」
セルシアは物足りなそうに笑いながら言った。

「避ける動作すらしなかったな。これでも『論武一如』の喧嘩師なのか、こいつ?」
黒うさぎも半笑いで不満を述べた。そして、叶姉妹の方を見た。
「ヒュー!ダイナマイト!!」

「ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン。ダッダーン!ボヨヨンボヨヨン」
セルシアがふざけながら叶姉妹に近づいていった。
と、しばらく歩いてセルシアはピタリと止まってしまった。

「おい、どうしたセルシア?」黒うさぎが訊ねると、
セルシアは「ギ!ギ!ギ!…」と叫んでゆっくりと黒うさぎの方を振り向いた。
そして、そのまま雑巾が絞られるみたいにギュウゥーッッ!と捻じ曲がり、全身から大量の血を噴き出して、死んだ。

「セ、セルシア!」黒うさぎは後ろに飛退って防御体制に入った。
「あ、あいつ、まだ生きてるのか!?」
キョロキョロするが、もちろん例の金髪の男は倒れたままで、死んだヤマアラシのようにピクリとも動かない。

兵たちもあたりをキョロキョロ探すが、敵どころか小動物一匹すら見当たらなかった。
 

アメリカン・クルーソー ( 2023/10/11(水) 00:12 )