全開!叶姉妹
ふと気付くと、叶姉妹とグッドルッキングガイは村上春樹が『騎士団長殺し』で描いたような異世界に飄々と立っていた。
基本的に黒世界といってもいいような世界であるが、間接照明のような柔らかい光がどこからともなくあらゆるものをあらゆる角度から照らしていて、ものを認識するのに不都合はない。逆に、あらゆる角度から光があたり、そして地面は漆黒なので影というものが存在しないのであった。
「ずいぶんとヘブンリーなところね、でも地獄なのでしょう?」姉の恭子がグッドルッキングガイに向かって言った。
グッドルッキングガイは何のことかわからず、ぽかぁんとしていた。
「お姉様、何だかお腹が空きません?」妹の美香が言った。
「あら、こんなとこまで来て姉妹を演じることないのに。食料ならとりあえずここにあるじゃない」
恭子はそう言うと、バナナでももぎ取るみたいに、グッドルッキングガイのデカマラを根元から引きちぎった。
そして、先っぽの亀頭にかぶりつくと、何故か「ショリッ」という音がした。
「美香さんもどう?コリコリして美味しいわよ」
グッドルッキングガイは「ああ〜」というあられもない声をあげるばかりである。
美香は近くにある漆黒のダビデ像を見ていたが、やおらグッドルッキングガイの腹に両手の指を突き刺すと、そのままグッドルッキングガイの皮を剥いだ。
「ああ〜」グッドルッキングガイはあられもない声をあげるばかりである。
美香はグッドルッキングガイから剥いだ血まみれの皮を、ダビデ像に被せて指で皺をのばしたり、ダビデ像の凹凸に合わせて皮を馴染ませたりしていたが、完成すると少し離れた場所からそれをうっとりと眺めた。
「あら、なかなかやるじゃない」
恭子は皮を剥がれ筋肉が剥き出しになったグッドルッキングガイに想像を絶する暴行を加えながら、感心したようにつぶやいた。
「おいおい、お前ら」
そこへ、鬼そのものといった格好をした典型的な獄卒が現れた。
「社会の制約から解放されたからって、秒で残虐行為に走ってんじゃねえぞ」
恭子と美香は、タバコをふかしながら、それを面白そうに眺めていた。