第四章「思い出の輪郭」
03
 窓際の席に座ると、夏の陽射しが白いカーテン越しに柔らかく差し込んできた。外はむっとする暑さなのに、店内は冷房の涼しさと、ほんのり甘いコーヒーの香りに包まれている。
 目の前には、カフェラテの泡がゆっくりと溶けていく。氷の音がカラン、とグラスの中で鳴った。

 私はスプーンでカップの中を一度かき混ぜ、それから少しだけ息を整えて話し始めた。
 すると、二人の反応は同時だった。


「はぁっ!?」


 店内のBGMが一瞬小さくなったように感じるくらい、その声ははっきり響いた。私は思わず背もたれに深くもたれかかる。


「ビックリした…、なんで二人が怒るの…?」


 戸惑いを隠せずに問い返すと、果歩が即座に言い返した。


「そりゃ怒るでしょ!」

「せっかく莉奈が勇気出して告白したのに、返事も何も返さなかったってこと!?」


 陽子の声が少し大きくなり、近くの席のカップルがちらっとこちらを見た。私は小さく肩をすくめる。


「別に告白っていうか…私もただ、初恋の相手が高宮さんだっていうのをお伝えしただけだし…」


 口にしてみて、自分でも苦しい言い訳だと思った。


「いやいや、それを世の中は『告白』っていうんだよ?」


 果歩は呆れたように眉を上げ、陽子も大きく頷く。


「『あれからあなたのことばかり考えちゃう』なんて、もう『あなたが好きです』って言ってるのと同じだよ?」

「そう…かなぁ…」


 曖昧な声が、自分の口から勝手に漏れる。


「ほんと、莉奈って恋愛偏差値低いんだから…」


 果歩はストローをテーブルに軽く置いて、ため息をついた。


「いい?せっかく思いを伝えたんだから、ここから引いたら絶対だめ」

「向こうがどう思ってるのか、ガンガン聞いていくことが大事だからね!」


 陽子が私の手をぎゅっと握り、目を覗き込む。


「……はい」


 圧に押されて頷くしかなかった。

 窓の外では、蝉の声が遠くに響いていたけれど、私の耳には二人の熱い言葉しか入ってこなかった。

■筆者メッセージ
莉奈ちゃんのミーグリ、めちゃめちゃ申し込んじゃった…♪
黒瀬リュウ ( 2025/08/22(金) 01:27 )