03
窓際の席に座ると、夏の陽射しが白いカーテン越しに柔らかく差し込んできた。外はむっとする暑さなのに、店内は冷房の涼しさと、ほんのり甘いコーヒーの香りに包まれている。
目の前には、カフェラテの泡がゆっくりと溶けていく。氷の音がカラン、とグラスの中で鳴った。
私はスプーンでカップの中を一度かき混ぜ、それから少しだけ息を整えて話し始めた。
すると、二人の反応は同時だった。
「はぁっ!?」
店内のBGMが一瞬小さくなったように感じるくらい、その声ははっきり響いた。私は思わず背もたれに深くもたれかかる。
「ビックリした…、なんで二人が怒るの…?」
戸惑いを隠せずに問い返すと、果歩が即座に言い返した。
「そりゃ怒るでしょ!」
「せっかく莉奈が勇気出して告白したのに、返事も何も返さなかったってこと!?」
陽子の声が少し大きくなり、近くの席のカップルがちらっとこちらを見た。私は小さく肩をすくめる。
「別に告白っていうか…私もただ、初恋の相手が高宮さんだっていうのをお伝えしただけだし…」
口にしてみて、自分でも苦しい言い訳だと思った。
「いやいや、それを世の中は『告白』っていうんだよ?」
果歩は呆れたように眉を上げ、陽子も大きく頷く。
「『あれからあなたのことばかり考えちゃう』なんて、もう『あなたが好きです』って言ってるのと同じだよ?」
「そう…かなぁ…」
曖昧な声が、自分の口から勝手に漏れる。
「ほんと、莉奈って恋愛偏差値低いんだから…」
果歩はストローをテーブルに軽く置いて、ため息をついた。
「いい?せっかく思いを伝えたんだから、ここから引いたら絶対だめ」
「向こうがどう思ってるのか、ガンガン聞いていくことが大事だからね!」
陽子が私の手をぎゅっと握り、目を覗き込む。
「……はい」
圧に押されて頷くしかなかった。
窓の外では、蝉の声が遠くに響いていたけれど、私の耳には二人の熱い言葉しか入ってこなかった。