04
雑貨屋を出る頃には、日差しも少しだけ和らぎ始めていた。
だけど、歩くたびにじんわりと汗がにじんでくる。私は手に持った紙袋を軽く揺らしながら、気づけば家とは逆方向のバス通りへと足を向けていた。
――別に、どこに行くってわけじゃない。
ただ、なんとなく、まだ家に帰るには早い気がして。
商店街を抜けた先の、小さな駅前広場。
その一角にある、白いパラソルが並んだこぢんまりとしたカフェ。
ちらほらと学生や親子連れがテラス席でくつろいでいて、私は何気なく、その前を通りかかった。
――そのときだった。
ふと、視線が引き寄せられた。
テラス席の一つ。
そこにいたのは、見間違いようもなく――高宮悠人さんだった。
そして、その向かいに座っているのは、見知らぬ女の子。
肩までの黒髪に、シンプルだけどセンスのいいワンピース。
笑顔で悠人さんに何かを話しかけていて、彼も、いつもの無表情とは違って、どこか穏やかな顔で頷いていた。
――その距離の近さと、空気の親密さに、私は思わず足を止めてしまった。
……知り合い? いや、もしかして、彼女……?
考えたくもない想像が、勝手に頭の中をめぐっていく。
すぐに目を逸らした。けれど、一度見てしまった光景は、頭から離れてくれなかった。
胸の奥が、ずき、と痛んだ。
手に持った紙袋の角が、じくじくと指に食い込んでいく。
「……なんで、こんなことで……」
小さくつぶやいた声が、風に溶けて消えていった。
冷静に考えれば、彼だって大学生の青春真っ只中の人だ。
素敵な相手がいても、何もおかしくなんかない。
それに、私にはまったく関係のないことだ。
――そう思い込もうとしても、心のどこかがざわついて仕方がない。
その先を考えるのが怖くて、私は無理やり歩き出した。
胸の内に広がるこの苦い感情に、まだ名前をつけることはできなかったけれど。