陽射しが強かった。
梅雨が明けたばかりの空は、濁りひとつないほどに澄み渡っていて、雲の輪郭すら溶けてしまいそうなほど白かった。アスファルトの照り返しは容赦なく、駅前ロータリーの植え込みにさえ、ひとひらの影を作らせてくれない。
私は、コンビニの軒先でスマホを握りしめたまま立ち尽くしていた。
「ごめん、あと10分くらい!」
陽子からのメッセージには、やたら軽い顔文字が二つもついていた。急いでいるような、そうでもないような――たぶん、まだ髪を巻いてる最中だろうなと、なんとなく想像がつく。
「まあ、別に急ぐわけじゃないけど……」
ひとりごちて、すぐ隣のベンチに腰を下ろす。日陰に入っても、暑さは容赦ない。風が吹けば多少マシにはなるけれど、それも一瞬のことだ。
汗ばむ手のひらでスマホを伏せると、視界の先で誰かが自転車を停める気配がした。
白いTシャツ。黒のキャップ。深くかぶった帽子のせいで顔は見えない。けれど、すらりと伸びた腕と、無造作に鍵をかけるその動作――なぜだろう、目が離せなかった。
――どこかで、見たような気がする。
そう思ってから、自分がじっと彼を目で追っていることに気づいて、少しだけ恥ずかしくなる。
だけど、すぐにその人はコンビニの自動ドアをくぐって、中へと消えていった。
私は、わずかに揺れるガラス扉の音をぼんやりと聞いていた。
名前も知らない。声も聞いたことがない。顔すら見えていないのに、どうしてこんなに引っかかるんだろう。
「……誰だったんだろ」
つぶやいた声が、自分でも聞き取れないほど小さくて、風にかき消された。
蝉の声がしつこいほど鳴いていた。
駅前のアナウンスと、行き交う車の音。どれもが夏の午後の構成要素みたいで、けれど私には、さっきの白いTシャツの背中だけが妙に鮮明だった。



















