第四章
01
 久しぶりのデートは銀杏が綺麗な公園でハイキングだった。

 彼と一緒にレジャーシートを広げ、その上に荷物を置いた美玖は、彼から貰った赤いパンプスを脱いで、そこに座った。


「いやあ、それにしても晴れてよかったね」


 美玖の横で始は気持ちよさそうに腕を広げながら、レジャーシートの上に寝転がった。

 日曜ということもあり、周りには他に家族連れが同じようにレジャーシートを広げていた。


 夏休みが終わり、二人は異なる学校に通いながらも、週に三回は必ず会うようにしていた。

 出来るだけ一緒にいたいと言う彼の願いを聞き入れ、それまで毎日のように入っていた家庭教師のバイトも週二にしてもらうよう先方に頭を下げていた。

 それだけ美玖は彼の想いに応えたく、彼との時間を大切にしたいと考えていた。


 レジャーシートの上に広げられたお手製の弁当を美味しそうに頬張る始の姿に、早起きして作った甲斐があったなと美玖は嬉しく想っていた。

 始は弁当箱の中にあったウィンナーを箸で持ち上げると、それを見つめながらつぶやいた。


「俺さ、タコさんウィンナー作れる女の子って、絶対将来いい奥さんになれるって昔から思ってんだよね」

「アハハッ、何その持論。根拠は何?」

「根拠は、今この時間かな」

「新田くんって、そういうキザなこと平気で言えるのすごいよね」


 笑いながら同じウィンナーを一口食べる美玖の横顔をじっと見つめ、彼が箸を置いて話しかけてきた。


「あのさ、そろそろお互い苗字呼び辞めない?」

「えっ…?」

「ほら、せっかく俺たち付き合ってるんだからさ、そんな距離感感じるような呼び方続けるのはなんか嫌だなって」

「あっ、そうだね…。うん…」


 人の名前を呼ぶ時、最初に言い始めてしまった呼び方から全く異なる呼び名に変えるには相当な勇気がいる。

 ただならぬ緊張感とそこはかとない気恥ずかしさに、美玖は勇気を出すことが出来なかった。

 俯き、黙ってしまった彼女に始も無理しなくていいと笑顔を見せ、再び弁当に箸をつけていた。

 申し訳ないという気持ちを抱きながらも、彼女はその償いをその夜、彼の家に戻ってから体で補った。

 三回目のデートから、最後は彼のアパートに向かい、お互いの体を重ね合うのが、お決まりのルーティーンになりつつあった。

 付き合ってからで考えるならば、まだ一回しかデートはしたことがなかったが、彼なりの愛情表現だと受け入れ、彼女は唇を重ねた。

■筆者メッセージ
ここから皆さんお待ちかねの『エロ』が、ちょっとずつ入るようになるかもです。

まあでもそんなにエロには気にせずに、物語を楽しんで欲しいな。

というのが筆者の本音。
黒瀬リュウ ( 2021/11/01(月) 23:27 )