04
須崎に飛びついた美玖は、そのまま貪るように唇を相手のそれに押し付けた。
彼の中には、常に奥さんがいる。
そのことを認めたくなかった彼女は、彼の中を自分で埋め尽くしたくなってしまっていた。その欲望に、怒りにも似たその感情に身を任せながら、美玖は激しく彼を求めた。
だが須崎はそれを拒み、彼女の肩をつかんで、自分から離させた。
「金村、落ち着いて」
そんな言葉など聞く耳持たないまま、また彼女は襲い掛かるように唇を重ね合わせる。
須崎はそんな彼女の唇を引き離すと、彼女の体を抱きしめて、動きを抑え込ませた。
「すまない…、本当にすまない…」
腕の中で抵抗する美玖を抑えつけるように、須崎は強く抱きしめ、彼女の耳元で何度も謝った。
だが彼女は謝ってほしいわけではなかった。
ただあなたの傍にいれたら、それだけでよかったのに。
謝らないで。
いやだ、あなたの口からそんな言葉は聞きたくない。
怒りなのか、悲しみなのか、それともそれ以外の何かなのか。
自分の感情が分からないまま、美玖は彼の腕の中で泣き叫んだ。
須崎はただ彼女のことを強く抱きしめ、彼女の悲しみを受け止めることしかできなかった。