第二章
10
 掃除が終わったひなのが一人歩いて校門から出ていくのを、音楽室から美玖は眺めて見ていた。

 後から彼女の後を追って横山が走って行ってたが、無事にひなのと合流できただろうか。

 そんなことを思っていると、ふと後ろに気配を感じ、振り返るとそこには須崎が同じように校舎の外の景色を心配そうに見つめていた。


「金村も、気になった?」

「…ええ」

「力に、なってあげてほしい」


 切実そうに須崎は美玖のことを見つめた。

 だが自分が思い悩んでいた時。側にいてくれたのは彼だった。

 そんな彼に最後の別れ際に"あんなこと"をされたら、自分はどう接したらいいのか分からなくなってしまうのが普通だった。


「一番近いのは先生じゃないですか」


 美玖はそう言い捨てると、カバンを急いで背負って、教室を後にした。

 音楽室にはボサボサ頭の理科教師が一人取り残されていた。

■筆者メッセージ
歯車が、狂い出す。
黒瀬リュウ ( 2021/10/27(水) 01:23 )