第六章『確証』
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 一学期が終わり、夏休みを迎えた。

 いつもであれば緒方と二人で街や海などに出向いて、ひと夏の思い出を過ごすところだったが、緒方との連絡も途絶えており、また進路のことも考えないといけなかったため、この夏は珍しく勉強というものに向き合うひと時となっていた。

 中学生の頃から、全く使っていなかった勉強机に向かい、担任の中池に用意してもらった問題集を教科書を確認しながら解き進めていたが、やはり高校三年間の授業にまともに向き合ってこなかったというハンデに抱えてしまっている以上、一問を解き終わるのにも、かなりの時間を有してしまった。


「ダメだ、このままじゃ問題集どころか、試験すらも出来る気がしない…」


 いっそのこともう諦めて逃げ出してしまおうかと天を仰いだ時、彼の携帯にメッセージの着信音が鳴った。
 画面をタップして明るくすると、『金村美玖』という名前が目に付いた。

 "渋谷での一件"以来、彼女とは顔を合わせることがなく、連絡すらも取り合っていなかった。

 特に用件がなかったというのもあるが、あの一件で彼女に感じてしまったどぎまぎとした感情から、彼女に言葉をかけるのが少し気まずく感じてしまっていたのだ。

 メッセージを開くと、彼女から今日時間があるかどうかを尋ねられていた。

 勉強も手に付かなくなっていたため、気晴らしのためにと大丈夫だと返事を返すと、それから数十分後、彼女から再び返信が届いた。


[よかったら今日一日、私に付き合ってほしい。]


その一言だけだったが、何かを感じ取った篠田は、特に理由を聞き返すことなく、分かったと返事を返すと、支度をして、渋谷へと向かった。

黒瀬リュウ ( 2021/10/31(日) 17:11 )