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<20年前>
今日も、部活終わり、一樹とともに下校の道を歩いていた京子は、思い切ってあることを彼に提案した。
「先輩、お姉ちゃんにラブレターとか書いたらどうですか?」
「は、はっ…!?」
予想だにしていなかった言葉に、一樹も思わずその足を止め、目を丸くさせたまま彼女に問い返した。
「な、なに言ってるの、突然…」
「だって先輩、あれからすっごい上の空じゃないですか。お姉ちゃんの話題出したら、分かりやすいぐらい動揺するし」
「えっ、そ、そんな分かりやすかったかな…?」
不安げに尋ねてくる彼に、可愛らしさを感じた京子はふふっと笑いながら答えた。
「分かりやすすぎます」
「いや…、そんなことはないはずなんだけど…」
「だから、もういっそのことラブレターとか書いてみたらどうですか?私、お姉ちゃんに渡しますよ」
「いやぁ、ラブレターはさすがに…。ね…、重たいでしょ…」
しかしその夜、彼は引っ越ししてから全く開けていなかった段ボールの箱を開け、そこからレターセットを引っ張り出すと、ペンを手に取り、そこに彼女への想いを記し出した。