第一章「あの日」
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 少女たちは二人並んで座ると、手紙をゆっくりと開いた。中には達筆な文字が長々と記されていた。

 ―拝啓、斎藤飛鳥様。君のことをどれぐらい覚えているかと聞かれれば、君と過ごした日々が昨日のことのように思い返されます。君と初めて出会ったのは、僕達が高校三年生の夏休みに入る前のことでした。当時、父親の仕事の関係で東京から山梨に引っ越した僕は、城南高校へ転校してきました。すでに三年間の共同生活で出来上がった空気感の中に、突如として放り込まれた異質物質の僕は、そう簡単には周囲に溶け込むことはできず、クラスの端の席で、一人、本を読んでいました。
 どうせ僅か数ヶ月だけの関わりだからと、周囲との関わりを避けていた僕に、真っ先に声をかけてきたのは、同じクラスの高橋という男でした。

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「ねえ、君、古典文学興味ある?」
「はっ…?」

 突然の問いかけに、鳴海は思わず本を読むのを止めて、顔を上げた。

「僕が部長を務める"古典文学研究会"っていうのがあるんだけど、よかったら今日の放課後、見に来ないかな?」
「どうして僕に…?」
「だって、君、暇だろ?」

 会って間もないはずなのに、どんどんと心の距離感を詰め寄ってくる彼に、鳴海は少し嫌悪感を抱いた。

黒瀬リュウ ( 2020/03/22(日) 18:29 )