07
少女たちは二人並んで座ると、手紙をゆっくりと開いた。中には達筆な文字が長々と記されていた。
―拝啓、齋藤飛鳥様。君のことをどれぐらい覚えているかと聞かれれば、君と過ごした日々が昨日のことのように思い返されます。君と初めて出会ったのは、僕達が高校三年生の夏休みに入る前のことでした。
当時、父親の仕事の都合で東京から山梨に引っ越した僕は、城南高校へ転校してきました。すでに三年間の共同生活で出来上がった空気感の中に、突如として放り込まれた異質物質の僕は、そう簡単には周囲に溶け込むことはできず、クラスの端の席で、一人、本を読んでいました。
どうせ僅か数ヶ月だけの関わりだからと、周囲との関わりを避けていた僕に、真っ先に声をかけてきたのは、同じクラスの高橋という男でした。
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「ねえ、君、古典文学興味ある?」
「はっ…?」
突然の問いかけに、教室の隅の席で本を読んでいた当時高校三年生の鳴海はその手を止め、顔を上げた。
「僕が部長を務める"古典文学研究会"っていうのがあるんだけど、よかったら今日の放課後、見に来ないかな?」
「どうして僕に…?」
「だって、君、暇だろ?」
会って間もないはずなのに、どんどんと心の距離感を詰め寄ってくる彼に、鳴海は少し嫌悪感を抱いた。