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その日、手紙が届いた。鳴海はいつものように郵便受けを覗いたとき、驚いた。昨日も彼女からの手紙が届いたばかりだったからだ。そんなに旦那に対する鬱憤が溜まっているのかと思ったが、封を開け、その内容を目にしたとき、少し考えを巡らせた。
―拝啓、鳴海一樹様。私のこと、どれぐらい覚えていますか?
齋藤飛鳥
白い便箋に記された文字は、その一行だけだった。
彼はすぐさまペンを手に取ると、机に向かい、その返事を書き出した。
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その日、少女は庭先で郵便局員を待っていた。
夏休みに祖父母の家に泊まりに来ていた矢先、突如届いた謎の人物からの手紙。宛先は叔母のようだったが彼女は好奇心を抑えきれず、従姉妹とともにその内容を読んだのだ。
―拝啓、齋藤飛鳥様。その後、いかがお過ごしでしょうか。迷惑をおかけしてしまったこと、大変申し訳なく思っております。君への返事をどうしても書きたくて、卒業アルバムからこちらの住所へ送らせていただきますが、君はまだここに住んでいますでしょうか…? 鳴海一樹。
それから数日後、大きな一軒家の庭先でスイカを食べながら、彼女はまだかまだかとその到着を待っていた。
「こんにちわー」
その声が聞こえたとともに、少女は玄関まで走り出した。急いで戸口を開け、郵便局員に挨拶をすると手紙を受け取り、また駆け足で家の奥へと向かっていった。
「真愛!真愛!手紙届いた!」
彼女の一声に、床の間に座り、夏休みの宿題を取り組んでいた少女は、勉強の手を止め、名前を呼ぶ従姉妹のもとへと向かっていった。