第一章「あの日」
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 放課後、高橋に誘われ鳴海がやってきたのは、第2科学室であった。どうして科学室なのかと尋ねれば、顧問が地学の教員だからだと答えられた。
 どうして地学の教員が古典文学研究会の顧問なのかと疑問に思いながら教室に入ると、すでに一人の女子生徒が長机の真ん中で本を読んで座っていた。

「やあ、おつかれさま」
「あっ、部長、おつかれさまです!」

 高橋の呼びかけに彼女は慌てるように立ち上がった。

「早いね。今日は」
「図書室で面白そうな本を見つけたので…。あの、そちらの方は…?」

 大きな瞳を鳴海に向け、困惑した表情を向ける彼女。それもそうだ。いきなり見知らぬ男子生徒が部室に入ってきたら、誰だって戸惑うだろう。
 彼女の視線に気づいた高橋はああと笑いながら、鳴海を紹介した。

「彼は鳴海一樹くん。東京からうちのクラスに転校してきたんだ。今日から"古文研(古典文学研究会の略)"に入ってもらおうと思ってね」
「いや、まだ入るとは一言も…」

 鳴海の言葉を聞き流すように高橋は、今度は目の前の彼女のことを紹介した。

「彼女は、齊藤京子さん。1年生で、うちの若手のホープ」
「ホープって…、体育会系の部活じゃないんですから」

 そう言って彼女は笑いながら、改めて自己紹介をしてきた。

「1年4組の齊藤京子です。よろしくお願いします」
「あっ、鳴海一樹です…」

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 ―これが君の妹との初めての出会いでした。

 手紙はそこで止まっていた。少女たちは続きを読みたいと便箋を探し出し、差出人に向けて返事を書き始めた。

黒瀬リュウ ( 2020/03/23(月) 15:12 )