Les gens perdus 〜終点〜
第一章
05
事務員の言われるがままに外に出てみたものの、どうやって仕事を探せばよいのか分からない。ふらふらと町を歩いた後に、パチンコ屋に入り、一儲けを狙った。
大家に全財産のほとんどを持っていかれてしまったため、手元の5000円でなんとか大勝を狙うしかなかった。無難に1パチで5000円分。彼は大勝負に出た。

「おや、楠木さんとこの坊っちゃんじゃねえか」

空いていた隣に座ってきたのは、近くの商店街で八百屋を勤める店主だった。

「あっ、柴田さん」
「こんな時間から1パチとは珍しいね」
「柴田さんの方こそ。店はいいの?奥さんに怒られるよ?」
「いいんだよ、いいんだよ。あんなやつのことは」

あとで店に戻ったときに、怖い奥さんに怒られることは間違いないなと思いながら、レバーを回していたとき、彼の台に異変が起きた。

「おっ!?」
「おい、坊っちゃん。そいつは確変じゃねえか!」
「キタキタキタ!」

潔く全財産を注ぎ込んだことが吉と来たのか、大当たりの大チャンスが彼のもとにやって来ていた。
だがそんな高まる気分を壊すように、ポケットの中で震えた携帯の着信で、現実に引き戻された。送り主は事務所の事務員である。

「もしもし?」
「もしもし。何やら騒がしいですね」
「あぁ、今ちょっと商店街の方まで来てて…」
「そうですか。構わないですが、早急に戻ってきていただけますか?」
「えっ?」

パチンコの音が爆音で鳴り響くなかで、大人しい彼女の声は電話越しでさえ、聞き取るのが難しかった。

「仕事の依頼です」
「依頼!?」
「もうすぐ依頼人いらっしゃいますので、急いで戻ってきてください」

そう一方的に打ち切られた電話を手に、当たっているこの台をどうすべきか悩んでいると、隣に座る八百屋の店主が「俺がやっとこうか」と言わんばかりのにやけ顔を浮かべ、こちらを見つめていた。

黒瀬リュウ ( 2019/02/01(金) 07:31 )