Les gens perdus 〜終点〜
第一章
01
刺さるように冷たかった風が、少し温かくなった季節。青年は風を切るように、坂道を下りながら、自転車のハンドルを握りしめていた。坂道を下り、少し角を曲がった先が目的地の建物だ。
青年は自転車から降りると車体に鍵をかけ、2階建ての外階段を登り、ポケットから鍵を取り出した。いつものように何気なく錠の中に鍵を入れたとき、青年は違和感に気づいた。鍵が奥まで入らないのだ。
原因は考えなくともすぐにわかった。鍵を勝手に変えられているのである。

「はぁ…、あのクソババア…!」

家賃の滞納により、大家によって鍵が変えられていることは、これまでにも何度もあった。その度に家賃を支払わなければ、室内に入ることができないと、大家の手の内で転がされていた。
だが今回、青年は対策をとってあった。こんなこともあろうかと、窓の鍵を開けておいたのである。
青年は階段の手すりを乗り越えると、小さな窓枠を指でつかみ、少しずつ鍵が開いてある窓へと、足を進めた。

指先で全体重を支え、つま先立ちでゆっくりと歩いていくその様は、まるでアスレチックの番組で、難関コースに挑む筋肉隆々の男たちの気分だった。

そんなことを考えながら、ようやく窓の前にたどり着き、それを開けようとしたとき、窓に人が映っているのが見えた。慌てて振り向くと、水色のランドセルをからった少女が怯えた表情で青年を見ていた。
彼女の表情から見てはいけないものを見てしまったとそう思っていることは、明らかだった。

「あ…、ち、違うんだよ!ここはもともと僕の…!」
「ドロボー!!!!」

爽やかで静かな朝の住宅街に大きく響き渡った彼女の声は、瞬く間に広まり
それに驚いた青年は思わず2階の高さから落ちてしまった。

■筆者メッセージ
ふらっと帰ってきました。三日坊主野郎でございます。
果たして、これは何日続くのかな…(笑)

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黒瀬リュウ ( 2019/01/26(土) 23:47 )