制裁 - 第一章:Beginning(始まり)
01
 正面には大きなスクリーンが降りていた。そこに映し出されていたのは多くの記者に取り囲まれた検察官の姿だった。
 彼は当時担当していた殺人事件の容疑者に対し、脅迫紛いの取り調べを行い、事実無根の証言を法廷で述べさせたとして、当時の世間でも大きなニュースとして取り上げられていた。
 スクリーンにはその当時のニュース映像が纏められた映像が流され、ワイドショーで社会学者のコメンテーターが検察官の不当性を熱弁する所で映像は途絶えた。

 広い講堂の中、ゆっくりとスクリーンが上がっていき、部屋の明かりが少しずつ点くなかで、明かりの変容に目を凝らした沖田征士カは目元を抑え、何度か瞬きをした。
 すると講堂入り口からがらごろとキャスターの転がす音を立てながら、大きなスチールラックを抑えながら一人の男性がやってきた。沖田は彼の姿を確認すると、慌てて姿勢を正し、背筋をピンと張らせた。

「さて、今、君達に見てもらったのは数年前に起きた検察官の不当な取り調べによる冤罪事件のニュース映像だ。どうしてこれを見てもらったか、分かるか?」

 男は壇上の前に立つと、目の前に座る青年に尋ねた。

「えっと、行き過ぎた取り調べは気をつけろというメッセージでしょうか…」
「うん、まあそういう見方もあるな。だが君達にこれを見てもらった本当の理由はそれではない。裁判員制度が始まって以来、この国には目に見える形というものが求められるようになった。それは我々検察官においても同様だ。一般市民から選出された裁判員には、我々の当然は通用しない。専門的なことは、しっかりと具体的に説明をしなくてはならない。そのために用意されたのがこれだ」

 スチールラックに取り付けられているのは一台の監視カメラ。そこにポンと手を置いた男は、カメラをじっと見てから、再び席に座る若者たちに目を向けた。

「これにより検察官の取り調べは原則録音録画が基本となり、これまでに比べて"より"公正な取り調べが行われるようになった。だからもし、被疑者に対して、『このバカ野郎!』などと叫んだりすれば、それは不当な取り調べとされる。」

 沖田はじっと静かに男の話を聞き続けていた。

「君達がこれから担当する被疑者たちの中には悪い奴もいるが、中にはこの事件のように善玉の人間もいる。固執した自分の正義感に溺れ、ひとつの考えに執着をしてしまえば、法律という名の真剣を振りかざした我々は、犯罪者へと堕落する」

彼の言葉に、沖田は黙って頷いた。

「以前も話したが、道徳的観点から、事件を俯瞰的に捉え、正しいストーリーを推察する能力が必要だ。弁護人は必ずアナザーストーリーを作り出してくる。それを打ち壊し、真実を白日の下に示すことが我々の仕事でもある。それを忘れないように。以上、2週間の研修、お疲れ様」

 検事の西城猛は新人検察官たちに優しい微笑みを見せると、講堂から颯爽と立ち去った。

■筆者メッセージ
お久しぶりです。過去の自分の作品を見て、なんとなく不甲斐なく感じ、リハビリ程度に少しずつ作品を書いていくことにしました。
また、ご覧になっていただけると幸いです。

それから、今のところどのメンバーを出すのかは全く決めていませんwww
なのでリクエストなんかしていただけると、参考になりますので是非ともコメント欄に書いていただけると嬉しく思います。

作品に関するご意見やご感想、その他等々のコメント、お待ちしております。
黒瀬リュウ ( 2018/10/02(火) 04:11 )