03
学校が終わり、友人たちと閉店した店が多く立ち並ぶシャッター商店街を歩いていると、見覚えのある顔を見かけた。
先日撮影してきた映画で主演を飾っていた、人気若手女優の向井地美音であった。
彼女とは共演するシーンは数える程度で、控室などでも多くコミュニケーションを交わしたわけではなかったが、見覚えのある顔にはどうしても反応してしまうものだった。
外見は可愛らしい顔をしており、身長が低いこともあってか、とても幼い印象を受けてしまったが、なんと自分と一つしか年が変わらないことに驚いたことを彼女は覚えていた。
そんな彼女の傍らに、明らかに不釣り合いな四十代ぐらいの小太りの男性が、彼女に寄り添い、肩を掴みながら歩いていた。
どうして彼女があんな男と。ふと一つの答えが頭をよぎったが、まさかと思い、それを無しとした。
「あれ、あの子って向井地美音じゃない」
友人の一人である小嶋菜月が、彼女の存在に気づいてしまった。彼女の言葉をきっかけに他の友人たちも次々と向井地の存在に気づいていく。
数人の女性から見られていることに気づかず、向井地と男は安っぽいホテルの中へと入って行ってしまった。
「え、嘘でしょ。もしかして、枕営業・・・」
「そういや玲奈、こないだ美音ちゃんと仕事一緒だったって言ってなかったっけ?」
「え、あ、うん」
突然話を振られてしまい、どう答えていいのか、変動に困ってしまい、玲奈は変にしどろもどろになってしまっていた。