第一章『絶対命令』
07
翌朝、俊哉が学校に登校し、クラスに入ると、信じられない光景が広がっていた。

黒板には『優等生、木村太輔は貧乏人』とでかでかと記されており、彼の机の上にはありとあらゆる暴言の落書き、そして白ユリの花が一輪だけ入った花瓶が置かれていた。


「なんだよ、これ・・・」


その光景に唖然としていると、教卓前にいた女王が、笑顔で彼のもとにやってきた。


「おはよ、村田くん」

「こ、これって・・・」

「ねー、私もビックリ。王子様かと思ったら、ただの貧乏人だったんだってー。借金もいっぱいあるみたいで可哀想だよねー」

「違う、あいつん家は兄弟が多くて・・・」


言い返そうとしたとき、グッと中井が近づき、彼の耳元で囁いた。


「あんたのせいでこうなったんだよ。あんたが今まで通り大人しくしてればよかったのに。あんたもいじめられたくなかったら、これまで通り大人しく私の言うことに従えばいいの」


普段聞いたことがない彼女の低音の声に、村田はただただ怯えるしか出来なかった。

そうしていると、ついに太輔がクラスにやってきてしまった。

いつも通り、爽やかな笑顔で教室に入った彼は、一瞬にしてその表情を曇らせた。


「た、太輔・・・」

「・・・。おう俊哉、おはよう!」


すぐに笑顔を見せた彼だったが、その笑顔が作りものであることは長年の付き合いでなくても、すぐにわかる事であった。

席に向かう途中、誰かが彼の足を引っかけ、そのまま倒れてしまった。

周りの連中は一切手を貸すことなく、彼の無様な姿をくすくすと笑っているだけだった。

■筆者メッセージ
地獄の始まりです。

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黒瀬リュウ ( 2017/06/26(月) 01:58 )