07
翌朝、俊哉が学校に登校し、クラスに入ると、信じられない光景が広がっていた。
黒板には『優等生、木村太輔は貧乏人』とでかでかと記されており、彼の机の上にはありとあらゆる暴言の落書き、そして白ユリの花が一輪だけ入った花瓶が置かれていた。
「なんだよ、これ・・・」
その光景に唖然としていると、教卓前にいた女王が、笑顔で彼のもとにやってきた。
「おはよ、村田くん」
「こ、これって・・・」
「ねー、私もビックリ。王子様かと思ったら、ただの貧乏人だったんだってー。借金もいっぱいあるみたいで可哀想だよねー」
「違う、あいつん家は兄弟が多くて・・・」
言い返そうとしたとき、グッと中井が近づき、彼の耳元で囁いた。
「あんたのせいでこうなったんだよ。あんたが今まで通り大人しくしてればよかったのに。あんたもいじめられたくなかったら、これまで通り大人しく私の言うことに従えばいいの」
普段聞いたことがない彼女の低音の声に、村田はただただ怯えるしか出来なかった。
そうしていると、ついに太輔がクラスにやってきてしまった。
いつも通り、爽やかな笑顔で教室に入った彼は、一瞬にしてその表情を曇らせた。
「た、太輔・・・」
「・・・。おう俊哉、おはよう!」
すぐに笑顔を見せた彼だったが、その笑顔が作りものであることは長年の付き合いでなくても、すぐにわかる事であった。
席に向かう途中、誰かが彼の足を引っかけ、そのまま倒れてしまった。
周りの連中は一切手を貸すことなく、彼の無様な姿をくすくすと笑っているだけだった。