06
昼休み、いつものように歓声が聞こえた。
いつものように太輔が教室に入り、中井と一緒にご飯を食べるのであろう。
そう思いながら、一人弁当を食べ進めていると、目の前の空席に、突然太輔が座ってきた。
「えっ、どうしたんだよ」
「いいじゃん。飯食おうぜ、一緒に」
その時、クラス中から冷ややかな視線を俊哉は感じた。
下層部の人間がクラスの頂点の人間と共に昼食をするだけなのに、皆の視線が痛かった。
「待て、太輔。ダメだって、こんなことしちゃ」
「気にすんな。他のやつは放っておけばいいんだよ」
マイペースに焼きそばパンを頬張りだした彼に俊哉は困っていると、とうとうクラスの女王が教室に戻ってきてしまった。
「あれ、太輔くん?えっ、なんでそんなところにいるの・・・?」
「なんでって、別にいいだろ。俺がどこで食べても」
「ダメだよ、そんな低レベルなやつと一緒にいちゃ。太輔くんにバカが移っちゃうよ?」
彼女の言葉に俊哉と太輔を除く、クラス全員が笑い声をあげた。
まさしくこのクラスは彼女の独裁国家。改めて俊哉はそう感じた。
すると太輔は立ち上がり、身長差のある中井を見下ろした。
突然のことに戸惑うしかない中井だったが、それでも毅然とした表情で彼を見つめていた。
「な、なに・・・?」
「あのさ、そういうところなんだよ。中井の苦手なところ」
「えっ・・・」
「俺のことはなんと言っても構わない。だけど俺の親友のことをバカにするのだけは、絶対に許さない。俺にとってこいつは、誰よりも大事な大切な仲間だ」
「太輔・・・」
じっと見つめる太輔に圧倒されたのか、中井は返す言葉もないまま、いつもの取り巻き二人を連れて、教室を後にした。
「お、おい、大丈夫かよ・・・」
「ああいうやつには、一回ガツンと言ってやんないと駄目なんだよ」
「いや、でも・・・」
太輔は何食わぬ顔で、再びパンを口にしていたが、彼の背中を見つめる強い視線の数々に、まだ彼らは気づいていなかった。