05
帰り道、家が近所にある二人は、並んで歩いて下校をしていた。
過ぎ行く人がみな、太輔の爽やかな笑顔を見て振り返る。
そんな光景を見ながら、俊哉は彼を一瞥した。
「お前はすごいよ」
「なんだよ急に」
「だって学校中の人気者じゃねえか」
「そんなの嬉しくねえよ」
「贅沢言うなって。イケメンで、スポーツも出来て、勉強も得意。クラスのアイドルからも好かれてるなんて、そんな贅沢なかなかできねえぞ?俺なんか、いっつも一人だからさ。羨ましいし、お前のこと誇らしいよ」
笑いながらそう言うと、太輔は寂しそうな表情を浮かべて、立ち止まった。
「一人ぼっちなだけだよ。キャーキャー言われてても」
「……、どういうことだよ」
聞き返してみると、彼は冗談だよと笑顔を浮かべて、再び歩き出した。
先を歩くその背中を追いかけようとしたとき、彼を呼び止める高い声が聞こえた。
「太輔くん!」
後方から、笑顔で手を振って中井りかがやってきた。
彼女の傍にはいつも彼女に取り巻く、荻野由佳と中村歩加もいた。
「太輔くん、一緒に帰ろう!」
「え、でも中井んちって、向こうじゃなかったっけ」
彼の言う通り、中井の家は二人の帰り道とは反対方向にある。
太輔が尋ねると、中井は少し頬を膨らましながら、彼の袖をキュッとつまみ、左右に揺らした。
「だってぇ、女の子たちだけで帰るの怖いんだもん。ほら、最近物騒でしょ?だからりかを守ってくれる王子様がいてくれないと、怖くて帰れないよぉ」
高三にもなって、この女は何を言ってるのだろう。
俊哉はそう思ったが、グッとそれを口にするのを押し堪えた。
太輔は困り顔を浮かべている彼女を見て、はあと一つ溜め息をつき、分かったと返事をした。
俊哉も付いていこうとしたが、取り巻きの二人にグッと睨みつけられたのがすぐにわかったので、ここで別れることにした。
「じゃあ、またな」
と彼に伝え、一人、夕陽に向かって歩き出していった。